2016 Fiscal Year Research-status Report
腸内細菌叢を介した精神疾患に対する栄養学的治療法の探索
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16K16291
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Research Institution | Meijo University |
Principal Investigator |
長澤 麻央 名城大学, 農学部, 助教 (80759564)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ストレス / 腸内環境 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、ストレス感受性と腸内環境との関連が示唆されている。腸内細菌叢を有さない無菌動物では、ストレス感受性が高くなり、不安様行動を示すという報告からも腸内環境と「ヒト」の精神面の健康との関連は想像に容易い。しかし、この報告は腸内細菌叢を有さない無菌動物を使用した極端な研究成果であるため、通常の腸内細菌叢の中でどの腸内細菌が変動した場合に宿主の情動行動に影響が現れるかを詳細に検討していく必要がある。そこで、ストレスが腸内環境を含め、宿主の代謝機能へ及ぼす影響を検証した。 ICRマウスへ拘束ストレス(1時間/日、21日間)を負荷することで、ストレス誘導性の情動障害を誘導した。長期的な拘束ストレス処理によって、認知機能障害様行動(物体認知試験)ならびに不安様行動(高架式十字迷路試験)が観察され、情動障害が誘導されることを確認した。長期的なストレス負荷による腸内環境への影響を間接的に評価するために、糞中の遊離アミノ酸および有機酸濃度を測定したところ、グルタミン酸の増加のみが確認された。腸内代謝物の変動が確認されたため、ストレス処理によって腸内環境の変動が推測される。そのため、ストレス負荷によってどのような微生物が増加あるいは減少したのかを明らかにする必要がある。現在、16SrRNA遺伝子をターゲットとしたqPCR法ならびに変性剤濃度勾配ゲル電気泳動法(DGGE法)を用いた腸内細菌叢の解析を検討中である。 また、生まれつきストレス感受性の高いWistar Kyotoラット(WKYラット)と正常なWistarラット(WISラット)の腸内環境の比較も進めている。この2系統の比較では、WKYラットにおいて糞中の多くの遊離アミノ酸濃度の低下が確認された。今後、qPCR法ならびにDGGE法を用いた腸内細菌叢の解析を進める予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究ではストレスが腸内環境へ及ぼす影響を腸内における微生物由来の代謝産物から評価できた。本年度に遂行予定であった腸内細菌叢の解析は現在実施中ではあるが、次年度に予定していたストレスが免疫系へ及ぼす影響やプロバイオティクス食品がマウスの情動行動へ及ぼす影響についてはすでに検討を開始している。以上より、順調に進展していると結論付けた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究方針として、まずはストレス負荷による腸内細菌叢の変動パターンを明らかにする。また、その際の免疫系への影響も明らかにする。現在、有用なプロバイオティクスを選定中であるが、プロバイオティクスの摂取によってストレスを緩和する結果が得られた際には、腸内環境ならびに免疫系への影響を評価し、更にはメタボローム解析ならびにプロテオーム解析を行うことでどういったメカニズムでストレス緩和作用が誘導されたかを明らかにする予定である。
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Research Products
(1 results)