2017 Fiscal Year Research-status Report
ビタミンD栄養状態判別のための簡易質問票の作成と臨床的妥当性の検討
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16K16292
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Research Institution | Osaka Shoin Women's University |
Principal Investigator |
桑原 晶子 大阪樟蔭女子大学, 健康栄養学部, 准教授 (00582602)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ビタミンD欠乏 / 魚類摂取 / 日焼け止め |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は、日照の機会が少ない女子学生のべ人数32名を対象に、5、6月時に簡易型自記式食事歴法質問票(BDHQ)および非連続3日間の秤量法による食事記録(DR)を行い、BDHQによるビタミンD摂取量の妥当性の検討行った。その結果、BDHQおよびDRによるエネルギー調整後のビタミンD(VD)摂取量中央値は、11.5μg/日および6.6μg/日とBDHQで有意に高く、両者のVD摂取量はr=0.6程度の有意な正相関を示した。次に、BDHQおよびDRのVD摂取量に寄与する食品群を重回帰分析にて検討したところ、DRでは魚類、BDHQでは干物、脂の少ない魚が有意な正の寄与因子であった。さらに、BDHQ およびDRのVD摂取量と血清25-水酸化ビタミンD(25(OH)D)濃度との相関性では、BDHQでのみ有意な正相関を示した。以上より、BDHQはDRに比べ過大評価となるため絶対値の妥当性は低い可能性はあるが、日照の機会が少ない集団においては、血清25(OH)D値とも相関するため、VD摂取量の相対的評価に有用であることが考えられた。さらに、平成28年度のデータに例数を追加した103名(男性32名、女性71名)を対象に、質問票作成のためのパイロット解析を行った結果、単変量解析において、地域(OR 22.2, 95% CI 7.73- 65.2, p<0.001)、手足に日焼け止めを使用することが(OR 2.89, 95% CI 1.20-6.94 p=0.02)、ビタミンD欠乏に至りやすい有意な因子となった。さらに、年齢、性別で調整した場合でも、居住地域がビタミンD欠乏の有意な正の寄与因子であったが、欠乏リスクの高い地域では日焼け止めの使用者の割合が高く、日本人におけるビタミンD欠乏把握のための簡易質問票には、日焼け止めの使用状況を把握する項目を含むことが必須であることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度に続き、データを確実に採取するために、対象者を病院、福祉施設職員として調査を進めたため、対象例数が予定よりも少数例となった。ただし、平成28年度と異なった調査地域での調査を行った。これは、ビタミンD栄養状態に影響する因子を検討する多くの既存の報告において、居住地域が選択肢に含まれていることに対応するためである。その結果、地域によるビタミンD欠乏状況は異なり、その要因として日照時間の違いや日焼け止めの使用を含む生活習慣の違いによる影響があることを検討することができた。この成果については、学会誌にて報告した。なお、今年度の終盤から、質問票の妥当性を高めるべく、これまでの調査地区と異なる新しい対象者の確保にも努めており、以上のような状況は、研究開始2年目としてはほぼ想定された研究の進展状況であると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
【現在までの進捗状況】にも示した通り、より妥当性の高い質問票を作成するために、対象例数を増やして解析を行う必要がある。そこで、新たに一般住民のデータを追加した調査を現在進めており、既に約500例程度は収集済みで、今後も対象者が追加される予定である。追加調査分については、詳細な日照時間についての項目も設けているため、日焼け止めの使用状況と併せて解析することで、ビタミンD栄養状態に対する日照の寄与を、より明確に検討できるものと思われる。また、簡易的な食事調査である、11-item Food diversity score. Kyoto (Kimura Y, et al. J Am Geriatr Soc. 2009)も含めており、BDHQよりもさらに簡単に回答可能な食事調査票とビタミンD栄養状態との関係も併せて検討する予定である。さらに、欧米ではビタミンDサプリメントの摂取がビタミンD栄養状態に寄与するものとして簡易質問票項目にも含まれているが、これまでの対象者ではサプリメント服用者数が極めて限られていたため、今回の追加調査を行う事で、サプリメントを主としたビタミンD摂取のビタミンD栄養状態への影響も検討することが可能であると考えられる。具体的な解析としては、これまでのデータに現在収集中のデータを追加し、まずはビタミンD欠乏に寄与する因子をロジスティック回帰分析、または共分散構造分析を用いて検討を行う。そこで抽出された因子を質問票に組み込み、重み付けを行うことで質問票のスコアを作成する。さらに、ビタミンD欠乏を判定しうるものかをROC解析にて検討し、カットオフ値の算出を行うことを目指す。
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Causes of Carryover |
【現在までの進捗状況】にも示した通り、平成29年度は確実にデータを採取しうる集団での調査に力を注いだ。そのため、当初予定していた件数の血清25(OH)D濃度およびその関連項目である、血清副甲状腺ホルモン濃度の分析を行うまでには至らなかった。このため、分析関連費用が次年度使用額となったものである。 使用計画としては、【今後の研究の推進方策】にも示しているように、既に新たな対象者の血液検体を500例以上採取しており、さらに追加される予定である。これら対象者分の血液検査費用が発生するため、平成29年度未使用となった助成金を使用する。なお、平成30年度分として請求した助成金については、当初の計画通りとして使用する。
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Research Products
(7 results)