2016 Fiscal Year Research-status Report
全天球パノラマVR教材を用いた日米遠隔平和学習の実践による批判的思考力の育成
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16K16322
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
瀬戸崎 典夫 長崎大学, 教育学部, 准教授 (70586635)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | バーチャルリアリティ / 平和教育 / タブレット端末 / 遠隔教育 / 異文化間交流 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,タブレット型全天球パノラマVR教材を用いた効果的な活用について検討した.具体的には,自由な探索活動および,他者への学習内容の発信を取り入れた平和教育を実践し,評価した.さらに,ノートテイキングの有無を分析の要因として学習効果を検討し,本教材の有効活用についての知見を得た.小学校6年生を対象に,長崎の原爆に関する知識課題を実施し,「学習活動」の観点から比較した.その結果,自由探索群とワークシート群は,事前テストから事後テストの得点が同様に向上し,1ヶ月後の追跡テストにおいても,事後テストの得点が維持されていた.したがって,知識獲得の観点において,本教材による自由探索的活動は,ノートテイキングと同等の効果が得られることが示された.また,アンケートによる主観評価の結果から,学習活動に関わらず,「関心・意欲」,「理解」,「実感」のすべての項目において比較的高い評価を得た.したがって,学習者は本教材を肯定的に捉えており,本やインターネットを利用した従来の授業形態と比較して,理解しやすいと感じた. さらに,本教材を利用して長崎の原爆被害および,現地からの遠隔中継によるホノルルの真珠湾攻撃を題材とした,戦争の加害と被害の面について学ぶ異文化間平和教育を実践した.その結果,被験者であった日本学生とラオス学生との戦争に対する認識に違いがあり,両者の異質性が確認された.また,自由記述による感想から,学習者らは一定の満足感を有しており,若い世代の関心を高めるという観点から,本教材を利用した異文化間平和教育の可能性を示すことができた.さらに,他者との異なる価値観や異質性の中に含まれる同じ価値観の認識を促し得たことから,本実践の価値を位置づけることかができた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度において,長崎の被爆遺構に関する全天球パノラマVR教材を開発し,AppStoreにて無料配信した.また,完成したアプリケーションを活用し,平和教育実践における効果的な活用について検討することができており,長崎の被爆遺構に関するアプリケーションの開発・評価としては順調に進んでいる. 次に,ホノルル市と平和交流事業を進める新潟県長岡市やオワフ島における平和学習に関する調査を実施し,日米における平和教育の現状についての知見を得ることができた.また,オワフ島における,真珠湾攻撃に関する資料を収集することができており,教材開発に向けての準備は整っている.さらに,真珠湾を訪問した際に,H29年度に実施予定の日米遠隔平和教育を想定し,真珠湾と長崎をつなぐ遠隔教育を試験的に実践した.したがって,実際の授業実践を想定した準備を進めることができており,概ね順調に計画を進めることができている. しかしながら,真珠湾攻撃に関するアプリケーションの開発がやや遅れている.その理由として,研究成果の発表や資料収集に必要とした出張旅費および,機材購入による物品費を予定より多く使用したため,システム設計を外注委託せずに,研究代表者の研究室スタッフを中心に開発することとしたことが挙げられる.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,進捗状況として遅れている,オワフ島真珠湾攻撃に関する全天球パノラマVR教材の開発を早急に進めることを第一とする.対策としては,研究協力者によるシステム開発補助に加え,研究室スタッフの協力体制を強めることによって,平成29年度の5月中には開発を終えるように尽力する.真珠湾攻撃に関する全天球パノラマVR教材の開発が完了すれば,長崎での実践もすぐに可能である.平和教育が盛んに実践される7月から8月の期間に照準を合わせ,批判的思考を促す平和教育の授業を設計し,実践する予定で研究を進めていく.さらに,ホノルルと長崎をつなぐ日米遠隔平和教育の実践を可能にすべく,現地調査および実践校との打ち合わせを進めていく.
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Causes of Carryover |
28年度に予定していた,システム設計の外部発注を取りやめ,自身の研究室での設計を中心に研究を進めたため,次年度に予算を残す状況が生じた.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度では,日米遠隔教育に関する打ち合わせ等で時間を要することが予想されるめ,出張費等に計上することを計画している.
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Research Products
(4 results)