2018 Fiscal Year Research-status Report
英国の歴史的橋梁保全におけるデザイン諮問機関の役割に関する研究
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16K16336
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Research Institution | Public Works Research Institute |
Principal Investigator |
榎本 碧 国立研究開発法人土木研究所, 土木研究所(寒地土木研究所), 研究員 (40713277)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | イギリス / 近代化遺産 / 保全 / RFAC |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、これまでに収集したRoyal Fine Arts Commission(RFAC)の1924年2月から1939年12月までに実施された定例会議事録を再整理し、この間にRFACで審査された歴史的橋梁事例について精査した。その結果、橋梁全体の審査件数は138橋266件であり、そのうち歴史的橋梁の改修・拡幅は9橋25件、再建の審査事例が41橋95件であった。 議事録の整理にあたっては、写真データで取得した議事録をテキスト認識できる形式に編集した。議事録には一部しか目次が作成されていないため、今回の整理により橋梁名等のキーワードでの本文の検索性が向上し、保存方法や審査における指摘内容、用語の使い方の変化など審査内容を精査する速度を向上することができた。 また、1924年から1939年の間に審査された個別の橋梁事例について調査し、それぞれの事例において、RFACにてどのような方針で審査が行われたか明らかにした。特に、橋梁の撤去については、初期の審査からRFACの委員らは慎重な立場を取っており、基本的には撤去を避けるよう改善案の検討を助言、指導していたことが明らかになった。一方で、補強や拡幅の方法については、原橋を撤去しないことを第一義的な目的にしながらも、当時、増大する交通量や対応する自治体の立場を考慮し、外観の特徴、アメニティを重視した工法であれば、今日的なオーセンティシティの観点から不可逆的な改変を承認している事例もみられた。 RFACの議事録のみでは、審査後に実際にどのような工事が行われたかの情報が不足するため、個別の橋梁事例についての資料収集も継続して行っており、現地の図書館及び公共機関のWEBアーカイブ、日本国内の図書館等において資料収集を行い、次年度以降の現地での調査計画をたてた。個別事例の調査については、資料情報の不足しているものも多く、今後の課題である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
RFACの史料については、イギリス国立公文書館に定例会議事録と審査に使用した関連資料、年次報告書が所蔵されている。これまでの現地調査から、当初の研究計画時に想定したよりも定例化議事録の量が多く、これに関しては研究期間内に資料収集が完了出来ない見通しであることから、既往研究の調査の結果、イギリスで歴史的橋梁保全の活動が停滞する1970年までの定例会議事録を収集し、これ以降は年次報告書から橋梁保全に関連する史料を収集し、1999年までのRFACの活動の全体像を明らかにする。審査関連の資料は橋梁に関する史料については収集を完了している。1960年までの議事録を収集し、1940年から1960年までのRFACの定例化議事録史料について整理は終わっているが、今後、この期間のRFACの審査事例の個別事例の調査を行うため、当初計画からは遅れていると考えている。 1924年から1939年間のRFACの歴史的橋梁保全に関する審査の方針や当時の社会背景から見た影響については、研究論文としてまとめ投稿し、発表予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
RFACの史料については、イギリス国立公文書館に定例会議事録と審査に使用した関連資料、年次報告書が所蔵されている。これまでの現地調査から、当初の研究計画時に想定したよりも定例化議事録の量が多く、これに関しては研究期間内に資料収集が完了出来ない見通しであることから、今後はイギリスにおいて歴史的橋梁保全の活動が一時停滞する1970年までの定例会議事録及び1970年以降については年次報告書を追加収集し、1999年までのRFACの活動の全体像を明らかにする予定である。 イギリス国立公文書館及びロンドンメトロポリタンアーカイブでの追加の資料収集を行い、収集したRFACの関連史料について整理、分析する。分析にあたっては、テキスト化した議事録データをもとにRFACの歴史的橋梁保全に対する方針や当時の社会的背景について検証した上で、1924年から1970年までの事例を比較検討し、総合的な検討を行うことを想定している。その成果を論文として公表する予定である。また、特に戦間期の歴史的橋梁保全の個別の事例研究において、追加資料の収集を行うことが可能である事例についても、現地調査を含む調査を実施し、論文としてまとめる予定である。
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Causes of Carryover |
当初計画より調査予定資料の数が多く、残りの資料収集のためにイギリスへ渡航予定であったが、研究機関の異動に伴い、調査予定であった渡航先との渡航期間の調整が出来ずに調査に行けなかったため、当初計画より研究が遅延した。そのため、研究期間の延長を申請し、予算の残額については、イギリスへ資料収集のため渡航費用に充てる予定である。
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