2018 Fiscal Year Annual Research Report
"Chosen minreki": Confrontation between Traditional and Modern Knowledge
Project/Area Number |
16K16337
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Research Institution | Hiroshima Shudo University |
Principal Investigator |
宮川 卓也 広島修道大学, 人間環境学部, 助教 (00772782)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 朝鮮民暦 / 改暦 / 民衆時間 / 帝国権力 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は植民地朝鮮において発行された『朝鮮民暦』を中心に、大韓帝国期から統監府期、朝鮮総督府期を通じて朝鮮半島における改暦の政治社会的意味を探求し、2018年9月に「植民地朝鮮における新旧暦書をめぐる相克」(『帝国日本の科学思想史』(勁草書房)に所収)として発表した。 本研究の意義は、次の3つに大別できる。一つ目は、帝国日本による改暦を通じた朝鮮の時間制度への介入は、総督府期ではなく統監府期の1909年にすでに強まっていたことを明らかにしたことである。一般的に、朝鮮に対する日本のさまざまな形での介入は、「公式」な植民地化が行われた1910年以降と考えられている。しかし暦に関しては、すでに大韓帝国期から改暦事業が進められていたとはいえ、日本の露骨な介入が1909年に始まっていたことを、暦書の内容の変遷を通じて明らかにした。 二つ目に、暦書に手を加えたことは、単なる時制の変更にとどまらず、社会的慣習・習慣、伝統的宇宙観への介入を意味していたことを論じた点にある。暦書は毎年の日づけを知らせるだけでなく、「迷信的」と扱われる日々の運勢に関する記述を多分に含んでおり、それが朝鮮の人々の暮らしを大きく規定していた。また日の吉凶は古来からの天文学・宇宙観をベースにしたものであったため、そこに足を踏み入れることは、植民地権力たる日本が人々の暮らしに直接的な介入を試みたことを意味していた。最後に、そうして強権的な生活改変を試みたにもかかわらず、人々の暮らしは簡単には変わらなかったことを示した。数百年以上にもわたって築き上げられてきた暮らしの慣性は強い生命力をもっており、植民地権力による強制に容易に屈しなかったことを論じた。
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