2017 Fiscal Year Research-status Report
動物考古資料の食餌推定に基づく飼養化個体判別法の構築
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16K16340
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Research Institution | The Graduate University for Advanced Studies |
Principal Investigator |
山田 英佑 総合研究大学院大学, 先導科学研究科, 特別研究員 (30748968)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 家畜化 / 採食生態 / マイクロウェア / イノシシ / ブタ / 動物考古学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、歯の表面に残される微小な傷「マイクロウェア」を、野生動物が家畜化される過程で生じた採食生態の変化指標とすることで、考古遺跡から出土した動物依存体の新たな分析手法を確立することを目指した。中でも、食肉資源として重要であり、かつ定住型農耕文化に典型的な家畜とされるブタと、その野生原種であるイノシシの判別に有効な指標の発見を主目的とした。 当該年度は、考古学的研究の基盤となる現生動物の資料に関連して、これまで得られたデータの分析と、新たに入手した家畜品種の資料からデータを収集する作業を進めた。データ分析の結果、野生環境下にあるイノシシでは線条痕様のマイクロウェアが卓越することが明らかとなった。一方、野生環境下で捕獲した後、屋内で配合飼料により飼養した「イノシシ」の歯の表面では、不定形の陥没様のマイクロウェアが卓越することが明らかとなった。これらの観察結果は、歯の表面形状を共焦点レーザ顕微鏡により三次元座標として計測し、国際工業規格(ISO25178)が定義する「表面粗さ」パラメータによって定量比較した結果からも支持された。以上のことから、採食生態の違いが歯のマイクロウェアに表出するとした仮説の妥当性が確かめられた。一方で、イノシシ・ブタのような雑食性動物では、マイクロウェアの個体差が大きいことも判明した。次に、琉球列島から出土した考古資料のデータを、地域・時代別に現生資料と比較分析した。その結果、一部地域では、従来の文献資料に基づく通説よりもはるかに古い時代から動物が飼養されていたことが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度は、沖縄本島の生産農家と研究協力体制を構築した結果、前年度の課題だった家畜資料の入手が可能になった。既に多数の資料を標本化しており、今後、マイクロウェア解析における考古資料群内の個体差が分析結果に与えうる影響を評価する際の基盤となることが期待される。また、研究協力者によって、マイクロウェア解析に用いる共焦点レーザ顕微鏡とソフトウェアを組み合わせる際のプロトコルを最適化する研究も進み、方法論としての成熟度も高まりつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
現生資料に対しては、特に家畜資料について、飼料の内容や飼育環境といった情報とマイクロウェアを関連付けることで、個体レベルで飼養の程度を推定可能な解析モデルの構築を目指す。一方、考古資料に対しては、これまで手薄だった地域、時代を中心にデータの収集を進め、琉球列島の家畜文化史観に新たな知見をもたらすことを目指す。
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Research Products
(12 results)