2017 Fiscal Year Research-status Report
日本の歴史天候記録による19世紀前半の夏季気温変動の復元
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16K16350
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
平野 淳平 帝京大学, 文学部, 講師 (80567503)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 気候復元 / 古日記天候記録 / 気温変動 / 夏季 |
Outline of Annual Research Achievements |
古日記天候記録から夏季気温を推定する手法の有効性を検証するために,現在の気象観測データを用いて,降水日数と夏季の気温との強い負の相関が認められる地域の地理的分布を明らかにした。その結果,西日本で7月と8月に月平均日最高気温と降水日数に強い負相関が認められ,日記から集計した降水日数をもとに夏季の月平均日最高気温を推定可能であることが明らかになった。気温推定方法についての検討結果を踏まえて,西日本に位置する広島の古日記天候記録から集計した降水日数をもとに1779年以降の7月と8月の月平均日最高気温変動を回帰推定した。推定の結果,従来の研究で東日本で冷夏に起因する大飢饉が発生したといわれている1780年代と1830年代は,広島の月平均日最高気温にも低温傾向が認められることが分かった。この結果から1780年代と1830年代の夏季の低温傾向は東日本だけではなく,全国的な現象であった可能性が高いことが分かった。また,古日記天候記録をはじめとする歴史資料の異分野間共有体制構築をテーマとする研究集会として第6回CODHセミナー「歴史ビッグデータ 過去の記録の統合解析に向けた古文書データ化の挑戦」を情報システム研究機構・人文学オープンデータ共同利用センターとの共催により開催した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在の気象観測データをもとに,古日記天候記録に記された降水日数から夏季の気温を推定する手法が適用可能な地域の地理的分布を明らかにした。その結果を踏まえて,広島における18世紀後半以降の古日記天候記録をもとに7月と8月の気温復元を行った。これらの成果を論文化し,学会誌へ投稿した。また,古日記天候記録をはじめとする歴史気候資料の利活用をテーマとして,第6回CODHセミナー「歴史ビッグデータ 過去の記録の統合解析に向けた古文書データ化の挑戦」を情報システム研究機構・人文学オープンデータ共同利用センターとの共催により開催した。これらのことから,本研究課題はおおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は,西日本に位置する広島の古日記天候記録から1779年以降の7月と8月の月平均日最高気温の変動を復元した。今後は,西日本における夏季気温変動傾向を関東や東北地方における気温変動傾向と比較し,18‐19世紀の夏季気温変動の地域性を解明するための解析を進める予定である。本研究で得られた気温推定値は,国内外への日本の気候データ公開を目的として設立された日亜気候計画JAPAN-ASIA CLIMATE DATA PROGRAM(JCDP)へ提供し,JCDPのウェブサイトを通じて公開する予定である。
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Causes of Carryover |
旅費および物品費が当初計画よりも少額で遂行できたため,次年度使用額が生じた。最終年度である次年度は,国際会議と国内学会へ参加し,研究成果発表を行うために旅費を使用する予定である。また,本研究で収集したデータの整理・入力のために人件費・謝金を使用する。
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