2016 Fiscal Year Research-status Report
複数事例の進展統合化グラフによる事業所内の潜在的リスク可視化システムの開発
Project/Area Number |
16K16367
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Research Institution | Okayama Shoka University |
Principal Investigator |
箕輪 弘嗣 岡山商科大学, 経営学部, 准教授 (50464300)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | リスクアセスメント / 事例解析 / 可視化 / 自然言語処理 / 事象の進展 / 進展の統合化 / 事故事例 / ヒヤリハット |
Outline of Annual Research Achievements |
本申請研究では,事故事例やヒヤリハット事象などの事例の進展を共通要因に基づき統合化し,進展経路,頻度などを可視化する事を目的としている.本年度は事例の進展の解析,および,可視化を実現する基盤ソフトウェア群(以下,解析フレームワーク)の開発を目標としていた. 解析フレームワークには,事例データの前処理,文法上の係り受け解析,主語,述語の抽出などの自然言語処理の機能,グラフによる事象の進展の可視化機能を実装した.それにより,事例データを読み込み,パラメータに応じた進展の可視化を実現した.前処理は,事例別に定義が必要だが,事象の進展の経緯を説明した文章の選択,句点の処理,箇条書き記号など不要な情報の除去などの機能を実装した.主語,述語の抽出に関しては,主語の省略といった課題があり困難であったが,開発したアルゴリズムでは評価データに対して約5-6割程度の精度で抽出できる事を確認した. 本年度は,PEC-SAFER事故事例集の423件を対象に研究を実施した.PEC-SAFER事故事例集は,石油各社あるいは石油連盟が所有している資料,事例,データのほかに,業界内のみでは不足する情報を補うため,専門家により分析,解析あるいは加工されたデータも含まれている.本事例における事故への経緯を説明した文章を基に,事故事象といった項目などを加味して解析を実施した.解析の一例として,PEC-SAFER事故事例集における事象の進展を説明する単語(形態素)において如何な結果に進展するかを調べた.形態素は品詞上の最小の単語を意味する.PEC-SAFER事故事例には事故事象というカテゴリを含んでおり,タンクという単語が含まれる事例は約130件あり,約60件が漏洩・紛失,約60件が火災・爆発,残りわずかに機器・装置の破損,環境影響,火傷・怪我・急性暴露など人身傷害,に分類されている事をグラフで可視化できた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1年目は事例の進展の解析・可視化の基盤となるソフトウェア群(以下,解析フレームワーク)の開発を目標としていた.事例から有用な知見を抽出するための解析モデルの模索は手探りであり,場合によっては解析モジュールの追加解析が必要だが,新しいモデルを構築しては解析,可視化の一連の手続きをスムーズに実現できる解析フレームワークの構築はおよそ実現できた. 当初は,解析フレームワークの構築までを予定していたが,進展の解析には目視で確認した方がモデル策定の方針を立てやすいと判断して,計画では後半に実施を予定していた可視化用のプログラムの開発に着手し,当初の計画より部分的に前倒しで進める事ができた(進捗の先行).しかし,別の分担の研究と本フレームワークの開発に時間を要してしまったため,本申請研究の研究成果発表ができていない点は不十分であった(遅延).そのため,先述した進捗上の先行と遅延との相殺を考慮して,進捗をほぼ予定通りであると判断する.
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Strategy for Future Research Activity |
次年度(2年目)の目標は,教育や事故防止に繋がる進展の解析・可視化モデルを検討し,その構築および評価を繰り返し実施していく.事故へ至る進展事象の説明文章は短いため,共通した進展を見つけ出す事は容易ではない.共通要因の抽出パラメータには,原因,事故事象など需要な役割を果たす単語,単語の品詞,主語,述語などの組み合わせ,などがあり,事象の進展の統合化モデルの構築には,各パラメータの値を変えて解析,可視化を地道に繰り返し実施する必要が有る.機械的にパターンを抽出する事は難しいため,専門家と相談しながら解析,モデル構築を実施していく. 論文の投稿においては,事象の進展を可視化した事で,事象の進展の理解といった教育用途に活用できそうであるため,本研究で明らかになった解析パターンと合わせて教育用システムという方向性を検討,論文としてまとめていく事を予定している.
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Causes of Carryover |
分担者として参画していた研究(以下,分担研究)に時間を要した事が主な原因である.分担研究では,問題提起,解決手法の提案,提案手法に基づいた手順支援ソフトウェアの開発,および,論文執筆,学会での発表を担当した.当初見積もっていた以上の研究時間を要したため,計画的な予算執行が困難であった.また,結果として,分担の研究に注力したために,当初予定していた出張を控える結果となり,使用額に差が生じた.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
主に,情報公開,情報収集のための旅費,論文投稿費の用途に使用する.また,研究協力者のPCの購入,謝金の支払いに使用する. 先述の「理由」欄に記した通り,予定以上に分担研究に時間を要した.その後,本申請の研究に注力した結果,解析フレームワークという基盤ソフトウェアを構築でき,計画した進捗に沿ってほぼ進める事ができた.今後は,研究成果の発表,是非を尋ねるため,情報公開,論文投稿,情報収集などを実施していく予定であり,その費用として使用させて頂く. 情報公開,論文投稿では,学会や研究会へ参加し,本研究成果の発表を行なう.加えて,情報収集を実施する予定である.また,本フレームワークをまとめシステム化する際,人手を要するため,研究協力者を募り,必要があれば,研究環境支援としてPCなどの購入および,謝金の支払いに当てる予定である.
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