2017 Fiscal Year Research-status Report
銅・鉄同位体を用いた本質噴出物と変質噴出物の識別:噴火推移予測の高度化を目指して
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16K16372
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
池端 慶 筑波大学, 生命環境系, 助教 (70622017)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 火山噴出物 / 水蒸気爆発 / マグマ水蒸気爆発 |
Outline of Annual Research Achievements |
本質噴出物と変質噴出物とを識別する目的のため、噴火日時が既知かつ噴火前後の地球物理学的観測データが比較的よくそろっているマグマ水蒸気爆発噴出物や水蒸気噴火噴出物、関連する火山地熱変質帯の熱水変質鉱物粒子の形態学的特徴等を実体顕微鏡や走査型電子顕微鏡(SEM)等を使用して確認した。その後、偏光顕微鏡、金属反射顕微鏡、粉末X線回折装置(XRD)、X線マイクロアナライザー(EPMA)等を用いて構成物の同定と局所化学組成の特徴の把握を行った。さらに、いくつかの噴出物(バルク)や熱水変質鉱物粒子に関しては、ガス質量分析計により、硫黄同位体組成分析を行い、これらの噴出物と関連する熱水変質の温度の推定を行った。さらに熱水変質鉱物中の流体包有物の均質化温度を測定し、硫黄同位体平衡温度と比較した。またマグマ水蒸気爆発による噴出物と考えられる試料の水溶性付着成分の化学組成分析に関しても実施した。 マグマ水蒸気爆発噴出物は、火山ガラス、造岩鉱物、熱水変質物を含む。実体顕微鏡観察の結果、水蒸気爆発噴出物には、自然硫黄や、それが溶融・燃焼したと考えられる粒子を含むことが多いが、マグマ水蒸気爆発噴出物からは現時点で自然硫黄の粒子は未確認である。しかし、バルク組成分析の結果、自然硫黄成分を検出した。水溶性付着性成分の化学組成や、硫黄同位体平衡温度、均質化温度は、水蒸気爆発試料と比較して、マグマ水蒸気爆発噴出物の方が高温を示唆した。マグマ水蒸気爆発噴出物とマグマ噴火噴出物とに含まれる微細な初生銅鉱物は、顕微鏡観察やEPMA等による化学組成分析では、その組織や組成に顕著な差異が無いことが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度の課題であった、マグマ水蒸気爆発にともなう噴出物試料の採集を行い、基本的な記載、構成粒子の局所化学組成分析を行い、それらの特徴について把握することができた。また、昨年は発見することができなかった加熱ステージを使用して均質化温度を測定することが可能な大きさの流体包有物を水蒸気爆発にともなう熱水変質鉱物中から発見し、硫黄同位体平衡温度や水溶性付着性成分から推定される温度情報と比較することができた。また、水蒸気爆発噴出物やマグマ水蒸気爆発噴出物試料に含まれる可能性が高い、地熱変質帯に産する自然硫黄の産状や組成等を把握することができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度に採集したマグマ水蒸気爆発噴出物中の自然硫黄の産状に関して、試料数を増やして顕微鏡観察を行うとともに、様々な局所分析法を駆使して明らかにする。平成29年度の研究により、地熱変質帯に産する自然硫黄の産状や組成は複雑であることが明らかになったため、現在活動中の地熱変質帯から追加で試料を採集して、比較しながら検討する。マグマ水蒸気爆発噴出物とマグマ噴火噴出物とに含まれる微細な初生銅鉱物は、顕微鏡観察やEPMA等による化学組成分析では、その組織や組成に顕著な差異が無いことが分かった。そこで、質量分析計等を使用して銅同位体比の分析を行い、両者に差異があるか確認する。しかし銅鉱物は微細であり、高精度・高確度で分析を行うことは困難であると予想されるため、採集済みの試料から粒径の大きな粒子の発見につとめる、または粒子数を増やす計画である。試料数に限りがあるため、水蒸気噴火噴出物等の追加採集を行う必要もある。
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