2016 Fiscal Year Research-status Report
地盤・構造物系の液状化被害予測における大変形解析の適用性検証と高精度化
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16K16374
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
上田 恭平 京都大学, 防災研究所, 助教 (60649490)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 遠心模型実験 / 傾斜地盤 / 液状化 / 側方流動 / 大変形解析 / 有限ひずみ理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
地盤・構造物系の大変形領域における地震時動的挙動に対する大変形解析の適用性について検証するため,遠心力場での模型振動台実験を実施した.今年度は,構造部材を有さない傾斜地盤から成る地盤系を対象に,振動実験を行った.実験では京都大学防災研究所の遠心力載荷装置(2010年竣工:有効半径2.5m,動的実験時の最大遠心加速度50G)を用い,傾斜式せん断土槽を振動台に設置し,テーパー付の正弦波により加振を行うことで,液状化に起因した地盤の大規模な側方流動や過剰間隙水圧の消散に伴う地盤沈下といった大変形現象を観察した.実験では,模型地盤の相対密度が均一となるよう,また地盤の飽和度を高めるため,細心の注意を払うとともに,地盤の側方変位量に加えて地盤内の応答加速度や過剰間隙水圧についても各種センサーにより計測を行った. さらに,この模型振動台実験を対象に,物質表示によるTotal Lagrangian法と空間表示によるUpdated Lagrangian法の双方に基づく大変形解析を実施した.これらの大変形解析に加えて,大変形領域における幾何学的非線形性の影響を定量的に把握するため,微小変形(ひずみ)理論に基づく微小変形解析も併せて実施した.予測精度を定量的に把握するための検証項目としては,液状化に伴う地盤の変形モード,側方流動変位や地盤沈下といった変形量,および液状化や地盤沈下の原因となる過剰間隙水圧の変動量(上昇および消散)を対象とした.実験結果との比較から,傾斜地盤系に対する適切なモデル化手法(例えば,初期自重の与え方等)が明らかとなり,大変形解析の優位性がある程度は示されたものの,全ての計測結果を定量的に再現するまでには至っていない.この点については,次年度により詳細に検討を行いたいと考えている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要に記述した通り,今年度は傾斜式のせん断土槽を用いて,傾斜飽和地盤に対する模型振動実験を実施した.実験では,当初計画していた通り,液状化に起因する地盤の側方流動を再現でき,併せて加速度や過剰間隙水圧の応答値も各種センサーにより計測することができた.過剰間隙水圧の消散に伴う地盤沈下に関しては,特殊なせん断土槽を用いる制約から変位計による連続計測はできなかったものの,加振前後での手動計測により沈下量を得ている.模型振動実験に加えて,当初計画していた通りTotal Lagrangian法とUpdated Lagrangian法の双方に基づく大変形解析も一通り行っており,全ての計測結果を定量的に再現するまでには至っていないものの,大変形解析の優位性は確認できた.以上のことから,現時点では当初の計画通り,おおむね順調に進展しているものと考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
研究実績の概要で述べた通り,大変形解析を用いた場合であっても,傾斜地盤系に対する模型振動実験の結果と一部合致しない部分があったため,まずはこの点について詳細な検討を行う.具体的には,解析におけるモデル化手法の見直し,また必要であれば傾斜地盤系に対する再現実験を行う予定である. 次に,当初の計画にある通り,矢板部材を有する地盤・構造物系を対象に,大変形領域における地震時挙動を対象とした遠心力場での模型振動台実験を実施する.地盤の液状化に伴う地盤流動や地盤沈下といった現象に加え,流動に伴う大変位が矢板部材に及ぼす影響を評価するため,矢板に発生する応力・ひずみの分布とその時系列的な変化の計測を微小変形領域から大変形領域に至るまで行う予定である. 数値解析では,地盤・構造物系の模型振動台実験を対象に,Total Lagrangian法とUpdated Lagrangian法の双方に基づく大変形解析を実施し,解析による予測精度を定量的に検証する.この際,過剰間隙水圧の変動や地盤変位に加えて,矢板に生じる応力・ひずみに関しても微小変形解析と大変形解析の間で,また大変形解析におけるTotal Lagrangian法とUpdated Lagrangian法の間で定量的な比較を行うことにより,地盤・構造物系に対する大変形解析の精度や適用性について明らかにすることを目的とする.
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