2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K16378
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
松枝 未遠 筑波大学, 計算科学研究センター, 助教 (80738691)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 大気顕著現象 / 予測可能性 / アンサンブル予報 / 数値予報 |
Outline of Annual Research Achievements |
再帰的に起こり持続性のある大規模な大気の流れを「天候レジーム」と呼ぶ。天候レジームの再帰性・持続性により、周辺地域に熱波・寒波・豪雨・暴風などの顕著現象がもたらされ、人間活動に甚大な被害をもたらす。本研究は、このような天候レジームに関連する大気顕著現象の予測可能性(どの位前から発生・持続・消滅などが予測可能だったのか)について調査することで、顕著現象がもたらす被害の低減に貢献することを目指す。 はじめに、天候レジームの特定とその予測可能性調査を行った。顕著現象が人間活動に与える影響の大きさを考慮して、研究対象季節は夏季と冬季、研究対象領域は欧州、北米、アジア、オーストラリアとした。天候レジームは、500hPaジオポテンシャル高度の主成分(経験的直交関数解析により得られる)に対してクラスタ解析(k-means法)を行うことで定義した。つぎに、研究対象となる「天候レジーム」に関連する大気顕著現象の抽出を行った。顕著現象は、気温、降水、風速のそれぞれの気候学的分布を再解析(観測)データから見積もった後、その90パーセンタイル値を5日以上連続して超えた(低温については10パーセンタイル値を5日以上連続して下回った)イベントと定義した。レジームと顕著現象が同時に発生、あるいは、レジームの発生が数日先行する事例に注目することで、偏西風の蛇行(ブロッキング現象)に関係する熱波や寒波、レジームに関連した豪雨・強風などを抽出した。 上記の研究と並行して、本研究で利用する3種類の現業アンサンブル予報データ(含む再予報データ)の取得を並行して行った。さらに、翌年度に使用予定の欧州中期予報センター簡易版数値予報モデル、気象庁海面水温感度解析予報モデルの筑波大学計算機への導入を試みた。 初年度に得られた成果の一部は、国際学会での発表、国際誌への論文や記事の出版を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
天候レジームに関連する顕著現象の抽出は予定通り行うことができた。しかしながら、アンサンブル予報データの取得に想像よりも時間がかかったため(データユーザの急増により英国にあるデータサーバの待ち時間が以前の数十倍になった)、天候レジームそのものの予測可能性は調査できたが、顕著現象の予測可能性については対象とする顕著現象の抽出をするにとどまった。また、2種類の数値予報モデルの筑波大学への導入では、各数値予報機関に固有のパッケージ等が多数含まれていため、数値予報機関と頻繁にやりとりをする必要があり、予想以上に時間がかかった(一部未完)。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度に抽出した顕著現象のうち特に人間活動に影響が大きかったものについて、予測可能性の調査を開始する。その際、できるだけ多くの事例を扱うことを目指すだけなく、予測可能性の源となる海面水温や土壌水分や海氷などの境界条件の特定にも努める。ここで得られた仮説を検証するために数値実験を行う可能性があるので、モデルの導入についても早急に完了できるよう努める。 また、今後研究を進めてゆく中で、特に影響の大きい顕著現象が発生した場合には、その予測可能性を優先的に調査し、いち早く論文として世界に公表することを目指す。
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Causes of Carryover |
論文の執筆が当初の予定より遅れているため、その英文検閲料・論文投稿料等がかからなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
当初の予定通り論文執筆時の英文検閲料と論文投稿料に使用する。
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Research Products
(13 results)