2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K16379
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Research Institution | National Institute of Occupational Safety and Health,Japan |
Principal Investigator |
平岡 伸隆 独立行政法人労働者健康安全機構労働安全衛生総合研究所, 建設安全研究グループ, 任期付研究員 (00756546)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 斜面崩壊 / パイプ流 / 地下水 / モニタリング / 土砂災害 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究はパイプ流の存在が斜面崩壊に及ぼす影響について,屋外計測実験と室内土槽実験,数値解析から明らかにするものである。本年度の研究実績として,屋外計測実験では計測対象エリアの決定のため,1m深地温探査,地中音探査,電気探査の結果から,地中内の水分量の高い場所を特定し,地形的に集水地形にある場所を測定対象地として選定した。対象エリアにて表層の深さを調べるために簡易動的コーン貫入試験を8箇所で実施し,得られたN値から地層構造を把握した。この結果を基に32箇所の設置場所と設置深度を決定した。 室内土槽実験では高さ90cm幅100cm奥行き154cmの土槽斜面に人工降雨装置によって降雨を与え,パイプ流を模擬した塩ビパイプを設置した場合と設置していない場合の崩壊過程および水分動態計測を実施した。模擬パイプ流を設置しなかった斜面では,20mm/hの降雨を5時間与え,その後50mm/hに降雨強度を上昇させたところ,28分後に斜面が崩壊した。一方で,模擬パイプ流を設置した斜面では50mm/hに変更後も崩壊は発生せず,パイプ流が斜面内にあることで,斜面内の地下水が排水され比較的安定することが分かった。しかし,模擬パイプ流の下端を閉塞させ,さらにパイプ内に水を加えたところ,大きく崩壊し,パイプ流の閉塞による崩壊が再現された。超音波多地点計測によって得られた降雨時の斜面内の水位を横断方向に比較すると,パイプ流や土槽境界に近いほど水位が低く,パイプ流が排水孔としての役割を果たしていることが確認された。また,パイプ流を閉塞させ注水したとき,パイプ流からの注水にも係わらず,パイプ流付近の水位の増加に比べ,パイプ流と離れた箇所での水位上昇が著しいことが確認された。模擬パイプ流の閉塞方法や設置位置を変えて,多地点計測時のパイプ流の検知や危険時の判定方法について検討して行く必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の予定では,平成28年度に屋外実験を開始している予定であったが,使用予定であった超音波トランスデューサ(40kHz)が廃版となり,現状の在庫収集と代替品のトランスデューサの選定と,それに合わせた測定システムの再構築に時間を要したため,現地への測定システムの設置が完了していない。超音波測定器においては軽微な改良で新旧両トランスデューサに対応できることが分かったため,確保した40kHz超音波トランスデューサでシステム構築し,順次,新センサに移行していく。なお,計測機器が揃わない時間を利用して,当初計画より詳細な計測対象地の調査・選定が実施できている。 屋内土槽実験では,平常時のパイプ流の排水効果や,閉塞による崩壊現象の過程を得られた。今後,パイプ流の閉塞箇所によって現象が異なることが予想されることから,さらなる追加実験を予定する。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は現地データの収集と整理を主として,室内土槽実験の追試や,数値解析を実施する。 屋外実験では上半期の台風期前に計測システムを構築し,斜面内の水分動態について多地点観測を実施する。平常時と大雨時の結果を比較し,水分動態の変化傾向からパイプ流の有無を判定できるのか検証する。また,通年の測定結果を統計的に分析し,計測対象斜面の水分動態と降雨強度の関係から危険判定が可能か検証する。 室内土槽実験では計測点を横断方向に増やし,パイプ流からの距離による測定結果の差異について追加実験によって検証する。また,パイプ流の配置やパイプに施した孔の位置を変更することにより斜面内のパイプ流の閉塞点を変え,測定データや崩壊形態の違いについて検証する。特に崩壊直前のパイプ流周辺部と少し離れた場所での水位の増加傾向の違いに着目する。 測定結果の考察ために数値解析を実施する。解析には有限要素法を用いて,斜面内の水分量や間隙水圧を考慮した安定解析を実施する。まずは室内実験を再現することで,パイプ流の表現や,実測によって得られた結果のインプット方法が問題ないか検証し,その後,現地斜面を解析する。なお,解析にあたり土質試験が必要な場合は随時,実施する。
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Causes of Carryover |
使用予定であった超音波トランスデューサが廃版となったため,代替品の超音波トランスデューサを使用することになったが,代替品での測定検証を行う必要があり,現地に設置する検出器の購入を次年度に見送ったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
測定器の軽微な改変で対応可能であるため,平成29年度に測定器の改良費及び検出器を設置個数分購入予定である。
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