2016 Fiscal Year Research-status Report
分子張力センサーを用いた力学的刺激下でのメカノシグナル可視化技術の開発
Project/Area Number |
16K16387
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
森松 賢順 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 助教 (70580934)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | メカノバイオロジー / メカノシグナル / シグナル伝達 / shear stress |
Outline of Annual Research Achievements |
生体器官並びに細胞は外部からの力学的刺激を受容し、応答することで正常な生体機能を維持する。機械刺激下での機械シグナル(メカノシグナル)の定量化の困難さが技術的障壁となっており、メカノシグナル伝達機構の解明には現在まで至っていない。本研究では、機械刺激の一つであるずり応力(shear stress)下での、分子張力センサーを用いたメカノシグナルの可視化定量技術の構築及び、実験で得られた知見によるメカノシグナル伝達機構のモデルの提案を目的とした。本年度では、主に培地の流速や流れパターンの制御によるshear stress制御システムとメカノシグナル可視化定量技術の構築に重点を置いて研究を推進した。その結果、shear stress負荷システムを顕微鏡下に構築した計測系が完成し、shear stressの細胞並びに細胞内分子への影響を長時間(24時間以上)に及ぶリアルタイム観察が可能となった。特に内皮細胞における細胞骨格分子、細胞接着斑分子がshear stressに対して水平方向に局在したことが観察され、shear stressによる細胞機能発現のメカニズム解明が期待される。 また、現計測系では分子張力センサーのシグナルの低さが未だ危惧されるものの、基板表面上にカーボン薄膜をコートすることで分子張力センサーのシグナルとノイズ比を上昇させ、内皮細胞におけるメカノシグナルの可視化にも成功した。その結果、初期段階であるが、shear stressの上昇に対して、細胞内のメカノシグナルの増加が観察され、細胞外マトリクスと細胞接着分子との結合がcatch bond メカニズムで動作していることを示唆した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
培地の流速、流れパターンの制御を行い、細胞に対するshear stress制御システムの開発を実施した。より定量的なメカノシグナルの計測のためには、現計測系での分子張力センサーのシグナルの低さが危惧される。しかし、この問題は本研究計画内の予想された問題の一つであり、現在シグナルの改善を目的とした分子張力センサーと計測系の改良を実施している。そのため、本研究はおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
定量的なメカノシグナルの計測のため、次年度は研究協力者の助言の下、シグナルの増加を目的とした実験系の改善を行う。その後、完成したshear stress制御システム下での細胞におけるメカノシグナルの定量を行う。shear stressに対するメカノシグナルの分布の時系列計測が可能となり、内皮細胞のメカノシグナル感受機構の解明に繋がる。さらには、GFP等の蛍光タンパク質を用いて、細胞接着斑関連分子、インテグリン分子、細胞骨格、シグナル伝達関連分子の局在等を同時に定量し、shear stressと細胞外マトリクスでのメカノシグナル感受機構と機能発現の包括的理解に迫る。
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