2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K16401
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
薮塚 武史 京都大学, エネルギー科学研究科, 助教 (20574015)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ポリエーテルエーテルケトン(PEEK) / 繊維強化PEEK / 細孔形成 / グロー放電処理 / アパタイト核 / 生体活性 / 擬似体液 / インターロッキング効果 |
Outline of Annual Research Achievements |
【実験】 ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、炭素繊維強化PEEKおよびガラス繊維強化PEEKに硫酸処理を施し,基材表面に細孔を形成した。その後、グロー放電により酸素プラズマを基材に照射した。グロー放電処理後、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンの溶解によりpHを上昇させた擬似体液に基材を浸漬し、液温を上昇させた。これにより、アパタイト核をPEEK、炭素繊維強化PEEKおよびガラス繊維強化PEEK表面の細孔内に形成し、生体活性を付与した。得られた生体活性PEEK、生体活性炭素繊維強化PEEKおよび生体活性ガラス繊維強化PEEKを36.5 ℃、pH 7.40の擬似体液に浸漬し(ISO 23317に準拠)、材料表面におけるアパタイト形成能を薄膜X線回折測定装置、走査型電子顕微鏡、エネルギー分散型X線分析装置を用いて評価した。形成したアパタイト層の接着強度を、引っ張り試験(ASTM C633に準拠)により測定した。
【結果】 硫酸処理により、PEEK、炭素繊維強化PEEKおよびガラス繊維強化PEEKの表面に網目状の細孔が形成された。ついでグロー放電処理およびアパタイト核処理により得られた、生体活性PEEK、生体活性炭素繊維強化PEEKおよび生体活性ガラス繊維強化PEEKを擬似体液に浸漬し、浸漬後の基材表面形態および構造変化をを薄膜X線回折装置、走査型電子顕微鏡、エネルギー分散型X線分析装置を用いて調べたところ、材料表面全体が1日以内に骨類似アパタイト層で覆われ、高いアパタイト形成能を示した。また、形成したアパタイト層は、インターロッキング効果により高い接着強度を示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の予定では2年目に実施を計画していた、酸素プラズマを用いたグロー放電処理によるアパタイト形成能への影響の調査も既に開始しており、既に良好な結果が得られつつある。さらに、各処理段階における基材表面の摩擦耐性評価にも着手している。また、原子間力顕微鏡による基材表面の微細構造観察については、2年目に行う。
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Strategy for Future Research Activity |
基材の各処理段階(未処理、硫酸処理後、グロー放電処理後、アパタイト核形成処理後)における微細構造の観察(原子間力顕微鏡観察を計画)、表面粗さ・表面積測定(レーザープローブ式非接触三次元測定装置、3D測定レーザー顕微鏡の使用を計画)、表面電位の測定(ゼータ電位測定装置の使用を計画)、表面処理層の摩擦耐性評価を行い、アパタイト形成能やアパタイトの接着強度との相関を明らかにする。また、赤外分光光度計を用いて、各処理段階において基材表面に生じる官能基の変化にも着目しながら、各処理がアパタイト形成能に与える影響を明らかにする。さらに、PEEKに炭素繊維、グラファイト、ポリテトラフルオロエチレンを配合した、摩擦耐性の高い高摺動性炭素繊維強化PEEKへの生体活性付与にも着手する。炭素繊維、グラファイト、ポリテトラフルオロエチレン等の添加物がアパタイト形成能に与える影響に着目し、細孔形成条件、グロー放電処理条件、アパタイト核形成条件を種々変化させ、一連の生体活性処理条件を最適化する。
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Causes of Carryover |
当初の計画では、パイロットスタディーを含めサンプルの使用枚数をそれぞれ500枚程度見込んでいたが、実験が1年目で当初計画よりも大幅に進み、少ないサンプルの枚数で成果を得ることができた。また、PEEKサンプルを当初の計画よりも安価に購入できるメーカーが見つかったため、現在は後者のメーカーを使用している。また、原子間力顕微鏡観察が2年目に繰り越しになった。上記の理由から、次年度への繰り越し額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
物品費1,294,090円、旅費500,000円、その他500,000円の使用を計画している。 物品費については、当初の計画に加え、高摺動性炭素繊維強化PEEKの追加購入を予定している。 その他については、当初の計画に加え、京都府所有のレーザプローブ式非接触三次元測定装置(3,700円/時間)、赤外分光光度計(2,600円/時間)、学内共有機器の原子間力顕微鏡(2,340円/時間)、ゼータ電位測定システム(1,070円/時間)、3D測定レーザー顕微鏡(1,000円/時間)等の大型共有機器の使用を計画している。
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Research Products
(7 results)