2016 Fiscal Year Research-status Report
口腔癌に対する磁気式カテーテルナビゲーションシステムの要求仕様と精度評価の研究
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16K16411
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
大屋 貴志 横浜市立大学, 附属病院, 指導診療医 (40711263)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | カテーテル / 口腔癌 / オーバーレイシステム / ナビゲーションシステム / 精度評価 / 上顎歯列 / 外頸動脈 |
Outline of Annual Research Achievements |
従来の口腔癌に対する動注化学放射線療法のためのカテーテル留置術では、耳前部の浅側頭動脈からカテーテルを挿入し術前に撮影したComputed Tomography Angiography(CTA)を参考に、術中のX線透視画像であるDigital Subtraction Angiography(DSA)を見ながら腫瘍栄養動脈にカテーテル先端を留置していた。術中のDSAは2次元画像でありカテーテル留置に難渋する症例では手術時間は増加し患者・術者双方の被爆量の増加や造影剤使用量も増加していた。そのため、先行研究では術者に外頸動脈の3次元画像を提供した、磁気式センサー付きカテーテルによる新たなカテーテルナビゲーションシステムを報告した。しかし、このカテーテルナビゲーションシステムでは頭頸部の位置、姿勢変化に追従するためのレファレンスマーカーの装着により生じる誤差や、術前と術中の顔貌変化、すなわちスキンシフトによる誤差、術者にとって煩雑な手順を踏まなければならないことが問題となっていた。そこで、外頸動脈との距離が近く容易に体外からビデオカメラで撮影できる変形のない硬組織として上顎歯列に注目した。上顎歯列は頭蓋骨に連続しており外頸動脈との距離が近いことから上顎歯列の位置、姿勢の変化を正確に検出することで、それに追従する外頸動脈の位置、姿勢を決定できると仮説を立てた。この仮説を立証するためにカメラで撮影された上顎歯列の画像にCTから抽出した上顎歯列の3次元画像を重ね合わせ、外頸動脈をオーバーレイするシステムを構築した。このシステムの精度評価のために口腔癌患者10症例の精度評価用模型を作製した。この模型上で精度評価実験を行いRMS±Std:1.27±0.34mmと要求仕様を十分に満たす良好な結果を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
カテーテルナビゲーションシステムの構築に重要な画像のオーバーレイシステムの精度評価が行うことができた。Wangらが開発したオーバレイ手法を本ナビゲーションシステムの構築のために応用したものであり、精度評価を行うためには精度評価用に工夫した模型が必要であった。倫理委員会に申請の上で口腔癌患者のCTAデータから上顎歯列が残存し歯科用金属によるアーチファクトが少ない画像データを10例抽出した。抽出した画像データから上顎歯列と外頸動脈の模型を光造形式3Dプリンターで作製した。精度評価を行うにあたりカメラの光軸を参考にする円柱と精度評価で使用する計測点となる直径1mmの孔を付与した正十二面体を設計しカテーテル留置術の目的血管である顎動脈,顔面動脈,舌動脈の分岐部に設置した。作製した模型をCT撮影し模型と模型の画像データのセットを10組作製した。そしてビデオカメラで上顎歯列と外頸動脈および精度評価用正十二面体が一体となった模型を撮影しその画像から上顎歯列の輝度、勾配情報を取得した。模型の前歯と画像データから抽出した前歯、臼歯の3次元画像をカメラ画像上で位置合わせをしたのちに外頸動脈をオーバーレイし模型のターゲットとオーバーレイ表示されたターゲットのそれぞれの位置座標を光学式位置計測装置で取得し2点間の誤差を算出した。要求仕様を2mmとし10症例の模型で行った。平成28年度の研究実施計画でのメインテーマである精度評価用模型の作製が順調に進んだことで、平成29年度の研究実施計画にある精度評価まで進むことが可能となった。これは想定以上に進んだ部分である。 しかし平成28年度に実施できたのはオーバレイシステム構築による精度評価であり、ナビゲーションシステムの完成には超小型磁気センサ内臓能動屈曲カテーテルの開発およびキャリブレーションが必要であり今後の課題である。
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Strategy for Future Research Activity |
オーバーレイシステムについては実際の手術を模擬したセットアップを繰り返し行い、オーバーレイの再現性を検討する必要がある。またナビゲーションシステムを完成するには、超小型磁気センサ内臓能動屈曲カテーテルの開発およびキャリブレーションが必要である。具体的には大同特殊鋼と日本ライフラインにより作製されるカテーテルの試作機が必要であり、完成の目途はたっている。試作機が完成したら東京大学で開発するコイルによるフィールドジェネレータとカテーテル内臓センサのキャリブレーション手法を開発する。最終的にカメラ画像内の位置情報と磁気式位置情報を統合し、カメラ画像上にカメラでは直接捉えていない磁気式センサ付きカテーテル先端の位置と姿勢を表示させその精度評価を行う。精度評価用模型はH28年度に完成しているため、キャリブレーションのための計測デバイスを東京大学と協力し準備する。
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Causes of Carryover |
平成28年度において3次元スキャナー装置の購入を予定していたが、3Dプリンターで作製した模型をCT撮影することで臨床条件通りのデータが作成可能であることがわかり購入不要となったことと、もともとの使用計画として次年度使用額50万円が見込まれており合わせて残額が生じている。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
超小型磁気センサ内臓カテーテルナビゲーションシステムを完成させるために、フィールドジェネレータ用の励起コイルやキャリブレーション用計測器具、デバイスを準備する必要がある。また、これまでの計画に加え、ナビゲーションシステムの画像表示をAugumented reality(AR)表示にすることでナビゲーション手術の有効性を高める試みを実施する予定で、そのためのデバイスを準備する必要がある。 キャリブレーション用計測器具は励起コイルがセッティングできるように設計し、塩化ビニルなどで作製する(非磁性)。作製費と材料費でおよそ20万円を見込んでいる。またAR関連でデバイスがおよそ35万円を見込んでいる。その他、発表関連(学会、論文投稿、ソフトウェア)でおよそ45万円を見込んでいる。
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