2016 Fiscal Year Research-status Report
筋疾患に対する運動が筋機能を悪化させる理由を間葉系前駆細胞の2面性から解明する
Project/Area Number |
16K16430
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Research Institution | Sapporo Medical University |
Principal Investigator |
齋藤 悠城 札幌医科大学, 医学部, 研究員 (40758702)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 間葉系前駆細胞 / 運動 / 骨格筋 / 筋再生 / 筋炎 |
Outline of Annual Research Achievements |
骨格筋の間質に存在する間葉系前駆細胞は骨格筋の再生および恒常性維持に不可欠な細胞であると同時に、筋疾患においては脂肪化、線維化の原因細胞とされ、2つの表現型がある。筋疾患に対するリハビリテーションでは運動刺激が炎症を助長し、線維化を加速させるリスクを抱えている。本研究ではなぜ運動刺激が筋機能を悪化させ得るのかを間葉系前駆細胞の2つの表現型に着目して解析している。 平成28年度はミオシンを免疫することで発症する慢性筋炎モデル動物を作成し、明からな筋力低下、持続的な炎症細胞浸潤および間葉系前駆細胞の増加を認めた。また、正常動物と慢性筋炎モデル動物からそれぞれ間葉系前駆細胞を単離し、遺伝子発現解析およびタンパク発現解析を実施した。筋再生、抗炎症、線維化、細胞増殖に関わるそれぞれの因子について解析を進め、慢性筋炎モデル由来間葉系前駆細胞、いくつかの因子においてあきらかに異なる発現パターンを示すことがわかってきた。 さらに、運動刺激直後の間葉系細胞においてもそれらの因子の発現パターンは慢性筋炎と正常動物の間で異なり、正常動物では筋再生を促す表現型の細胞となり、慢性炎症では線維化や炎症を助長する表現型となる可能性もわかってきた。 平成29年度はこれらの因子について詳細な解析を実施し、なぜ慢性筋炎と正常動物では運動刺激による間葉系前駆細胞の応答が異なるのかを明らかにする。さらに、慢性筋炎であっても運動刺激によって間葉系前駆細胞を筋再生を促す表現型に変換させられる方法を探索し、有効な運動療法のメカニズムの解明を目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
筋炎モデル作成は当初の予定どおりに完了した。間葉系前駆細胞の形質評価も順調に進行し、一定の結果を得られている。しかし、いくつかの実験系においてサンプルサイズが小さいものがあるため、次年度以降も引き続き間葉系前駆細胞の形質評価を継続して実施する予定である。また、すでに運動介入実験を開始しており興味深い研究成果を得ている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は継続して運動刺激が間葉系前駆細胞に与える影響を中心に解析を実施して、筋炎に対する運動刺激が筋機能を悪化させるメカニズムを解明する。さらに、筋炎に対する運動によって筋機能を改善させる方法を検討する。具体的には、これまでに同定してきた筋炎モデル動物間葉系前駆細胞で低下/上昇する因子をもとに、それらを活性化/阻害する薬物を運動と併用することを考えている。また、力学刺激の強度および種類によっても間葉系前駆細胞の反応が異なることが推察されるため、運動刺激の強度および種類を検討し、理想的な運動刺激について検討を深める。
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Causes of Carryover |
当該年度は仮説を証明するために、最小限必要なサンプルサイズでの検討をおこなってきたため、当初の計画よりも培養皿などの消耗品、抗体などの試薬の使用量が少なかったために、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究の信頼性、妥当性を高めるためにはサンプルサイズを大きくする必要がある。次年度使用額は当該年度に実施した実験のうちサンプルサイズが不足した実験系における消耗品および試薬の購入費にあてる。
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