2016 Fiscal Year Research-status Report
アルツハイマー病の認知機能障害に対する非薬物的介入の脳内メカニズムの解明
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16K16434
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Research Institution | Ibaraki Prefectural University of Health Science |
Principal Investigator |
角 正美 茨城県立医療大学, 保健医療学部, 嘱託助手 (30646261)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | アルツハイマー病 / 認知機能障害 / 社会的孤立 / 習慣的運動 / 脳内ストレス応答 / シナプス機能障害 / ラット |
Outline of Annual Research Achievements |
日本における認知症の社会的コストは2014年時点で14兆5千億円に上ると推計され,基礎研究の推進とエビデンスに基づいたケアの充実が必要不可欠である.薬物的治療の研究は基礎実験を中心に積極的に行なわれているが,根治療法に近づく様な成果は現段階において得られていない.一方、アルツハイマー病(AD)を代表とする認知症患者に対して行われる非薬物的介入が認知機能にどのような影響を及ぼすのか,その脳内メカニズムについての十分な基礎研究は行われていない.本研究では,「閉じこもり防止」と「運動処方」という2つの非薬物的介入に焦点を当て,これらの介入がADの認知機能障害に及ぼす影響を調べる.現在までに,①ADモデルラットにおいて記憶保持能力低下がみられること,②社会的孤立がADの認知機能障害を増悪させること,③習慣的な自発運動が認知機能を向上させることを掴んでいる.これらの結果をつなげる要素として「脳内ストレス応答」に着目し,行動科学,組織・生化学的手法を用いてメカニズムの解明を目指した。 本研究は,ADモデル動物を用いた基礎的研究であるが,生活環境(社会的孤立)や生活習慣(運動)がADの学習・記憶障害にどのような影響を及ぼすのか,そのメカニズムを明らかにすることで,AD患者やその家族,そして非薬物的介入を行なう様々な専門職が自信を持ってケアやサービスを実施するためのエビデンスを提供できると考えられ,社会的意義も大きいと言える。 平成28年度は、前述した①ADモデルラットにおいて記憶保持能力低下、および③習慣的な自発運動が認知機能を向上させることの行動科学的な確証を得るとともに、行動課題終了後の脳を摘出し、左右の半球を分けて凍結保存した。実験必要数まで達した時点で、シナプス機能障害の程度および脳内ストレス応答について検討を始める予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
交付額が申請額よりも減額されていたため、必要数の回転カゴを揃えることができなかった。結果として、1クール(7週間)で行う被験体数が減ってしまい、論文必要数に至るまで当初の計画よりも時間を要する。平成27年度までの結果を持って、国際学会にて発表を行う予定であったが、交付額の減額により渡航を断念した。
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Strategy for Future Research Activity |
研究代表者の雇用形態が変わり、実験場所の確保を行なっている(平成29年5月現在)。行動科学的な解析を行う場合、同環境での実験継続が困難となった際には、実験の統制を図るため、新しい環境において実験の追試を行う必要がある。実験追試によって、当初の実験計画よりも更に遅れることが予想される。現在、できる限り同環境にて実験が行えるよう、所属機関と検討中である。 平成28年度に実験を行ない、現在凍結脳となった被験体に対しては、生化学的解析に進む予定である。 また、申請書に記した通り、本研究課題の基礎となる平成28年度までの実験結果について論文投稿する。
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Causes of Carryover |
論文投稿を予定していたが、平成28年度中には投稿まで至らなかった。論文投稿費用として予定していた額が、次年度への繰り越し金となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
論文投稿費用として使用予定である。また、平成29年度および30年度の実験消耗品(試薬、実験動物購入費、その他)を購入にも当てる。
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Research Products
(1 results)