2017 Fiscal Year Research-status Report
痙攣性発声障害における評価アルゴリズムの開発および治療効果の判定に関する検討
Project/Area Number |
16K16438
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Research Institution | Health Sciences University of Hokkaido |
Principal Investigator |
柳田 早織 北海道医療大学, リハビリテーション科学部, 講師 (20548581)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 内転型痙攣性発声障害 / 発話評価 / 信頼性 / 妥当性 / 聴覚印象評価 / 音響分析 / Visual analog scale |
Outline of Annual Research Achievements |
痙攣性発声障害(以下、SD)における重症度や治療効果に関する標準的な評価法が確立されていない現状を踏まえ、本研究ではSDの評価アルゴリズムの開発(妥当性と信頼性の検討)を目的としている。 【研究目的と対象】当該年度は内転型SD患者における発話評価の信頼性と妥当性を検証することを目的とし、内転型SD患者24名(女性20名、男性4名、平均年齢39.7±14.5歳)および疾患群と年齢性別をマッチングした24名の健常者が対照群として本研究に参加した。 【検討項目】(1)Visual analog scale(VAS)を用いた聴覚印象評価により内転型SDの音声症状を定量化できるか。(2)音声症状の裏付けとして、異常な音響特徴を音響分析により定量化できるか。(3)聴覚印象評価における評価者内(間)一致度と音響分析における測定者内(間)一致度から本評価法の信頼性は高いか。(4)聴覚印象評価と音響分析の感度と特異度から本評価法が診断を補完する評価法として有用か。 【結果】(1)聴覚印象評価の結果、疾患群の「全体的な重症度」のVASスコア(48.0±29.5 mm)は対照群(0.7±1.3 mm)より有意に悪化した(P<.001)。(2)異常な音響特徴のうち「音声途絶」は疾患群のみで観察され、「基本周波数の変動」(疾患群:3.0±4.1%、対照群:0.3±0.7%、P=.004)の割合は疾患群で有意に増加した。(3)「全体的な重症度」の評価者内一致度および評価者間一致度はいずれも平均r=.90以上で聴覚印象評価の信頼性は高かったが、音響分析の信頼性は高いとはいえなかった。(4)聴覚印象評価は感度91.7%、特異度100%で、音響分析は感度70.8%、特異度100%であった。 上記研究結果についてはJournal of voiceに投稿し、掲載が決定している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
患者の大部分を占める内転型SDについては、今回新たに開発した発話評価法の信頼性および妥当性を証明することができた。一方、外転型SDについては患者数が少ないことから同様の検討は行えていない。また当該年度の研究目的であった「治療効果の判定」については、本疾患に関する治験進行状況に伴い治療(欧米で最も一般的とされているボツリヌムトキシン局所注入療法、甲状軟骨形成術)を積極的に選択する患者を十分に確保することができずいまだ検討できていない。
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Strategy for Future Research Activity |
本疾患に関する治験進行状況に伴い治療(欧米で最も一般的とされているボツリヌムトキシン局所注入療法、甲状軟骨形成術)が開始される目処が現時点で明らかではないため、治療効果の判定については充分な検討が行えない可能性がある。そのため、今後は当該年度におけるもう一つの研究目的であった「類似疾患との鑑別」を主な研究目的とする予定である。
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Causes of Carryover |
当初の計画よりも実験参加者の追加がなく、それに伴う諸経費が不要となった。 次年度は「類似疾患との鑑別」が主な研究テーマとなるため、生体計測機器(具体的には筋電図検査装置)の購入とこれを用いた音声治療効果を検証し、すでに開発した発話評価法と合わせてその有用性を検討する予定である。
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