2017 Fiscal Year Research-status Report
発達性協調運動障害の身体性・模倣能力の定量化とバーチャルリアリティ訓練の効果
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16K16453
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Research Institution | Kio University |
Principal Investigator |
信迫 悟志 畿央大学, 健康科学部, 特任助教 (50749794)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 発達性協調運動障害 / 自閉症スペクトラム障害 / 注意欠陥多動性障害 / 抑うつ症状 / 視覚運動統合 / 自動模倣 / 模倣抑制 / 視点取得 |
Outline of Annual Research Achievements |
定型発達の大学生30名を対象に,経頭蓋直流電気刺激を使用して,自閉症スペクトラム障害(ASD)で困難となる模倣抑制機能,視点取得機能に関わる脳領域の調査を実施した。その結果,下前頭回領域と側頭-頭頂接合部領域は,模倣抑制および視点取得の両方に重要な働きを有していることを明らかにした。 4-15歳の子どもたち132名を対象に,視覚情報と運動情報を時間的に統合する機能(視覚-運動時間的統合機能)の発達変化について調査した。その結果,年齢と運動機能は,それぞれ独立して,子どもたちの視覚-運動時間的統合機能の予測因子であることが明らかとなった。この結果は,子どもたちの運動機能(微細運動機能)と視覚-運動時間的統合機能との重要な関係性を明らかにした最初の研究である。 4-15歳の発達性協調運動障害(運動の不器用さ)リスクを有する子ども(pDCD児,29名)と年齢と性別を揃えた定型発達を有する子ども(TD児,運動の不器用さを持たない子ども,42名)を対象に,視覚-運動時間的統合機能および自動模倣機能の比較,およびASD,注意欠陥多動性障害(ADHD),抑うつ症状などの特性傾向の調査を実施した。その結果,pDCD児は,TD児と比較して,視覚-運動時間的統合機能および自動模倣機能が有意に低下していた。さらに,pDCD児は,TD児と比較して,ASD傾向・ADHD傾向・抑うつ傾向が有意に高値であった。そして,子どもたちが有する視覚-運動時間的統合機能は,pDCD(運動の不器用さ)の有意な予測因子であることが判明した。この結果は,視覚-運動時間的統合機能や自動模倣機能を改善するハビリテーション介入が,運動の不器用さの改善に効果的である可能性を示唆した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の計画では,平成28年度に,発達性協調運動障害(運動の不器用さ,DCD)と自閉症スペクトラム障害(ASD),注意欠陥多動性障害(ADHD),抑うつ症状との関連性を明らかにすること,DCDと視覚-運動時間的統合機能,自動模倣機能との関連性を明らかにすることとしていた。これらについては,明らかにすることができ,論文による公表も実施できている。 平成29年度には,DCD児に対するバーチャルリアリティ訓練の効果検証を目標とした。しかしながら,バーチャルリアリティの子どもへの適用は,斜視に繋がるかもしれないとの研究結果があったため,実施を見合わせたため,「やや遅れている」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
当初,DCD児に,視覚-運動統合障害があれば,その視覚-運動統合を促進する方法として,バーチャルリアリティトレーニングの有効性を考えた。実際,本研究課題の一連の研究によって,DCD児が持つ運動の不器用さと視覚-運動統合機能には,重要な関連性があり,視覚-運動統合を促進する方法が運動の不器用さの改善に繋がる可能性は強く示唆された。 しかしながら,視覚-運動統合を促進する方法は,確率共鳴デバイスや運動観察療法など,他にも存在している。したがって,バーチャルリアリティートレーニングのみならず,他の方法による介入も実施し,運動の不器用さの改善に効果的な方法の抽出を図っていく予定である。
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Causes of Carryover |
当該年度の成果の公表(論文掲載)が,平成30年度4月以降となったためであり,その掲載料として使用する。
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Research Products
(8 results)