2016 Fiscal Year Research-status Report
情動と気分変化を利用した快/不快ストレス予測に基づく労働者のうつ病予防支援の研究
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16K16471
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
梶原 祐輔 立命館大学, 情報理工学部, 助教 (80710706)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 生体信号による一過性ストレス推定 / 生体信号による慢性ストレス推定 / 近未来の気分に与える影響分析 / 情動推定 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究目的は専門スタッフの代わりに労働者が近未来の仕事を認知した際の『情動』と『気分変化』から各仕事が与える一過性/慢性の,快/不快ストレスを予測し、うつ病予防を支援することである。平成28年度の研究計画は、一過性ストレス負荷実験を行い、その結果を因果分析し、近未来の仕事を認知した際に変化する情動を用いた一過性の快/不快ストレス予測手法の開発を行い、評価することだった。この研究計画にしたがい,情動発生時の脈拍と発汗量の変化を解析し、各情動発生時の脈拍数と発汗量の平均と標準偏差に差があることを示した。またスケジュール認識時の気分の変化を解析し、3日後のリラックスする余暇に対して発生した期待が3日後の気分に影響することを示した。また脈波の周波数成分から一過性ストレスが発生する作業と、慢性ストレスが発生する作業を推定し、9割以上の精度で推定できることを示した。さらに、近未来の気分を積層した深層ニューラルネットワークで予測し、生体情報と、予測日までの気象情報、現在の気分から0.69の精度で2週間の気分を予測できることを示した。これらの内容は研究発表2-7と雑誌論文2, 3, 9で発表した。また研究論文2, 3, 10はScience Citation Index Expandedに登録されている。また研究発表6でSESSION BEST PAPER賞を受賞した。また平成30年度のフィールド実証実験に向けて研究発表1で講演し、協力企業を募集した。 本研究課題の手法は労働者の心理的反応から近未来のストレスを予測するため,どんな仕事にも適用でき,うつ病予防に適したフォローを可能にする.上記の研究実績は、現在まで得られている情報から近未来の快・不快ストレスを予測できることを示唆しており、意義が高く、重要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成28年度の研究計画は、一過性ストレス負荷実験を行い、その結果を因果分析し、近未来の仕事を認知した際に変化する情動を用いた一過性の快/不快ストレス予測手法の開発を行い、評価することだった。情動から一過性の快/不快ストレスを予測する前段階として、研究発表2で脈拍と発汗量から情動を推定できることを示した。またイベント認知時の情動の変化から快/不快ストレスを予測できることを示すために、研究発表4, 6でイベントへの期待が近未来の気分に影響を与えることを示した。一方で、研究計画ではイベント認知時の情動の変化から一過性の快/不快ストレスを予測することになっていたが、イベント認知時の情動を推定し、一過性の快/不快ストレスを推定する場合より生体信号から一過性の快/不快ストレスを推定する方が高精度だったため、生体信号から一過性のストレスと慢性ストレスを推定し、9割以上の精度で推定できることを示した。その結果を研究発表3, 7で示した。さらに平成29年度の気分予測精度の向上を行い、近未来の気分を積層した深層ニューラルネットワークで予測し、生体情報と、予測日までの気象情報、現在の気分から0.69の精度で2週間の気分を予測できることを示した。その結果を雑誌論文2で発表した。当初の平成28年度の研究計画で示した近未来の仕事を認知したさいに変化する情動を用いた一過性の快/不快ストレス予測が生体信号を用いた一過性の快/不快ストレス予測に修正することになったが、一過性ストレスのストレス源となる仕事の量、慢性ストレスのストレス源となる仕事の質、人間関係を9割以上の精度で推定できている。快/不快ストレスに関しては今後議論する必要があるが、これらの研究成果から順調に進んでいる。と自己点検による評価を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度に行った一過性/慢性ストレス負荷実験の結果を解析し、快/不快ストレスと仕事の関係を明らかにする。この一過性/慢性ストレス負荷実験では、Karasekの仕事要求度-コントロールモデルに従い、慢性の快/不快ストレスを付与した。予測に必要な情報はNIOSHの職業性ストレスモデルに従い、取得した。個人要因の性格は、研究計画ではYG性格検査を行い、評価する予定だったが、一過性/慢性ストレス負荷実験は国際的に広く使われているBig fiveを用いて性格を評価した。これらの要因を回帰分析および機械学習により解析し、快/不快ストレスと仕事の因果関係を明らかにする。また個々のユーザの生体信号を機械学習することで、高精度に一過性/慢性のストレスを推定できることを示したが、トレーニングデータに一過性/慢性のストレス負荷時のユーザの生体信号のパターンがない場合、著しく精度が低下することが実験から明らかになった。この問題を解決するためにユーザの性格などの個人特性を考慮し、あらかじめグループ化することでこの問題の解決を目指す。また平成30年度の企業のオフィスワークを想定し、フィールド実証実験を行う前段階として、オフィスワークを想定した予備実験を行い、快ストレスを推奨、不快ストレスを防止する等の労働環境を改善させるうつ病予防策の有用性を検証し、評価する。一過性/慢性の,快/不快ストレス予測を行い、各仕事の特性と、各仕事が与える心理的ストレスの関係を分析し、うつ病予防を支援する手法を開発する。これらの仕事に対して適切なストレスコーピングを行い、フィールド実証実験に向けた知見を得る。
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Causes of Carryover |
論文別刷りとして20万円計上していたが、研究成果が表れた日にちが2月中旬ごろだったため、Journal誌への採録が2016年度に間に合わなかった。そのため、122,192円の次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
現在、研究成果をJounal誌へ投稿中である。122,192円の次年度使用額はその論文別刷代として計上する。
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