2016 Fiscal Year Research-status Report
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16K16483
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
藤井 進也 慶應義塾大学, 環境情報学部(藤沢), 講師 (40773817)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 音楽 / 神経科学 / リズム / 脳 / 個人差 / 知覚 / 運動 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度である本年度の研究実績は、以下3つである。 1)研究代表者が開発した「ハーバードビート評価テスト(Harvard Beat Assessment Test: HBAT; Fujii & Schlaug, Front Hum Neurosci, 2013)」は、音楽リズムの知覚・生成能力の個人差を評価するために開発されたテストである。しかし、本研究実施前は、HBATはハーバード大学医学大学院(Harvard Medical School, Beth Israel Deaconess Medical Center, 米国ボストン)内にのみ設置された状態であり、国内には設置されていない状況であったので、慶應義塾大学湘南藤沢キャンパスと駒木野病院内にHBATを設置し、国内での実験実施体制を整えた。 2)現有HBATの設置には、パソコンやMATLABソフトウェア、オーディオインターフェス、タッピング入力デバイス等の実験機器の設定が必要であり、一般にはなかなか普及しにくい。そこで、スマートフォン(iPhone)使用に対応したHBATアプリケーション(新型HBATアプリ)の開発に取り組み、試作品を作成した。 3)ハーバード大学医学大学院と国際共同研究を行い、一般健常成人を対象に、HBAT実験と核磁気共鳴イメージング(Magnetic Resonance Imaging: MRI)を用いた脳機能構造計測を実施した。これまでに、Voxel Based Morphometry(VBM)の手法を用いて、脳の灰白質信号強度の個人差について分析を行い、小脳の灰白質構造とHBATで評価したリズム知覚能力に相関が見られるという興味深い知見を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前項研究実績 1)に関しては、当初の計画通りであり、国内でHBAT実験を実施する体制を無事に整えることができた。2)に関しては、現状では新型HBATアプリの試作品を作成した段階であり、アプリの完成にはまだ至っておらず、当初の計画よりもやや進展が遅れている。3)に関しては、当初の計画以上に研究が進展している。HBATスコアの神経相関分析は、研究計画の3~4年目に行う予定であったが、初年度に研究の一部を実施することができた。予備的解析の段階ではあるが、HBATの Beat Interval Test というサブテストで評価したリズム知覚閾値の個人差と小脳の灰白質信号強度の個人差が相関するという興味深い分析結果をこれまでに得ており、今後成果の報告が期待できる。以上の進捗状況を総合的に判断し、「(2) おおむね順調に進展している」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
前項研究実績1)により、国内でのHBAT実験実施体制を整えることができたので、今後HBAT実験を精力的に国内でも実施し、さらに多くの研究参加者から実験データを取得することを目指す。また、慶應義塾大学医学部・駒木野病院と共同研究を行い、国内でのMRI研究を推進する方策である。2)のスマートフォン使用に対応した新型HBATアプリの開発に関しては、当初の計画よりもやや進展が遅れているので、今後重点的にアプリ開発に取り組む。また、新型HBATが開発出来次第、アプリで取得したデータの妥当性・信頼性について検証するため、現有HBATとの比較対象実験を実施する計画である。3)のハーバード大学との国際共同研究は順調に進行中であるので、今後も引き続き継続して共同研究を推進する。具体的には、VBM解析により得た灰白質信号強度の個人差とリズム知覚域値の個人差に関するデータ分析結果を国際学会にて発表し、国際学術誌に論文として発表することを目指し、引き続き研究を推進する方策である。
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Causes of Carryover |
年度当初の計画時よりも、研究に必要な物品等の調達を安価に行うことができたため、次年度に使用する研究費が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
実験用消耗品の購入、研究参加者への謝金や、共同研究実施・成果発表のための旅費・交通費として使用する計画である。
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Research Products
(7 results)