2017 Fiscal Year Research-status Report
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16K16483
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
藤井 進也 慶應義塾大学, 環境情報学部(藤沢), 講師 (40773817)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 音楽 / 神経科学 / リズム / 個人差 / VBM / HBAT |
Outline of Annual Research Achievements |
計画2年目である本年度の主な研究実績は、以下4つであった。1) 音楽リズムの知覚生成能力の個人差を評価するテスト「ハーバードビート評価テスト(Harvard Beat Assessment Test: HBAT)」のiOSアプリケーションの開発に取り組んだ。iOSアプリのβ版を開発し、取得データの妥当性について検証した結果を情報処理学会第80回全国大会にて発表した(今野&藤井, 2018)。2) 慶應義塾大学医学部精神・神経科学教室MTRラボと共同で、健常者と統合失調症患者を対象にHBATを実施し、臨床症状評価と脳波計測、核磁気共鳴イメージング(Magnetic Resonance Imaging: MRI)計測を行った。得られたデータで統合失調症患者のHBATスコアと臨床症状評価スコアの関係について調べたところ、音楽リズム知覚生成能力の低下度と統合失調症臨床症状の重症度の間に関連性がある可能性を見出し、第13回日本統合失調症学会にて発表した(本多ら, 越智ら, 加藤ら, 2018)。3) ハーバード大学と共同研究を行い、健常人を対象にHBATとMRI計測を実施し、Voxel Based Morphometry(VBM)の手法を用いて、HBATスコアと脳灰白質信号強度の相関分析を行った。実験の結果として、小脳の灰白質強度の個人差とHBATスコアの個人差の間に関連性があることを見出し、得られた結果をNeuroImage誌上に発表した(Paquette, Fujii, Li, & Schlaug, 2017)。4)トロント大学サニーブルック研究所と共同で、音楽聴取が視覚運動回転変換課題の学習プロセスに及ぼす影響を調査し、NeuroMusic学会にて発表した(Fujii et al., 2017)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前項 1) に関しては、当初の計画よりもやや進展が遅れている。今後、より多くの人々を対象にHBAT iOSアプリの妥当性検証実験を実施し、iOSアプリの公表をすみやかに実現する必要がある。2) に関しては、おおむね順調に研究が進展している。引き続き、健常者と統合失調症患者を対象にHBATとEEG/MRI計測を実施すると共に得られたデータを解析し、成果の公表を目指し研究を推進する必要がある。3) に関しては、当初の計画以上に研究が進展した。HBATで測定した時間間隔変化の知覚判別域値と小脳の灰白質信号強度が相関するという興味深い実験結果を得て、NeuroImage誌上に研究成果を発表することができた。4) に関しては、当初の計画にはない実験であったが、音楽と運動学習の関係に迫る基礎的研究を着実に進展することができた。以上の進捗状況を総合的に判断し、「2 : おおむね順調に進展している」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
前項 1)に関しては、引き続きHBATのiOSアプリの開発と妥当性検証実験に取り組む。さらに多くの人々を対象に実験を行い、オリジナル版のHBATで取得したデータと、新しく開発したiOS版で取得したデータの比較検証を引き続き行う。得られた実験の結果を論文としてまとめ、iOSアプリ公表と一般配信の実現を目指して研究を推進する。2)に関しては、引き続き健常者と統合失調症患者を対象としたHBATとEEG/MRI計測を実施し、データ解析を推進する。特に、安静時脳機能MRI(resting-state functional MRI: rs-fMRI)データや、MRスペクトロスコピー(MRS)データなどの解析に焦点をあて、統合失調症の病態機序と音楽リズムの知覚生成機序の一端を解明することを目指す。3) のハーバード大学との共同研究も引き続き推進する。特に、HBATデータと他の音楽機能評価タスクデータの比較検証に焦点を当て、データ解析と論文化を推し進める。4) のトロント大学と共同研究も引き続き推進し、音楽聴取が運動学習効率に及ぼす影響について引き続き検証する。今後は特に得られたデータの解析を重点的に行い、研究成果の学会発表と論文化を目指して研究を推進する方策である。
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Causes of Carryover |
年度末時期に生じた経費の支払い・清算手続きが平成30年4月以降になるため、平成30年3月31日時点では翌年度に使用する研究費が生じているが、平成30年4月以降に行う支払い・清算に使用する予定である。
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Research Products
(11 results)