2019 Fiscal Year Research-status Report
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16K16483
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
藤井 進也 慶應義塾大学, 環境情報学部(藤沢), 准教授 (40773817)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 音楽神経科学 / リズム / 個人差 / ハーバードビート評価テスト / iOS / 統合失調症 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の研究実績は以下の7つであった。1) Harvard Beat Assessment Test(H-BAT)のiOS アプリケーションを開発し、オリジナル版のH-BATと比較して、高い結果の一貫性が見られることを明らかにした(Konno et al., RPPW, SMPC, 2019)。2) シカゴ大学と共同で、筋電気刺激による他動運動が、テンポ変化の知覚や時間長の再生成に与える影響を明らかにした(Konno et al., SfN, SMPC, 2019)。3) 慶應義塾大学医学部精神・神経科学教室MTRラボと共同で、統合失調症患者を対象にH-BATを実施し、リズム知覚生成機能が認知機能やMRI脳機能構造指標に関連していることを明らかにした(Honda et al., RPPW, SMPC, 聴覚研究会, 2019; Matsushita et al., SMPC, 2019)。4)近赤外線スペクトロスコピー(NIRS)を用いて、H-BAT実施中の脳活動を測定し、運動野の脳活動増大がリズム知覚に関連していることを明らかにした(松木ら, Motor Control 研究会, 2019)。5) 福島県立医科大学と共同で、精神疾患患者を対象にリズムトレーニング介入前後のH-BATスコアの変化を測定し、脳波ミスマッチ陰性電位との関連を調査した(高橋ら, 2019; 星野ら, 2019)。6) マックスプランク研究所と共同で、リズム知覚生成の国際比較研究を実施し、日本人のリズム知覚生成の特徴について明らかにした(Jacoby et al., SMPC, 2019)。7) 日本赤ちゃん学会、聴覚研究会、Lorenz Center Workshop にて、上記研究成果についてレビューした研究発表・講演を行った(Fujii, 2019; 藤井, 2019)
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究実績で述べた(1)-(7)の成果を総合的に判断し、「当初の計画以上に進展している」と判断した。本研究の当初の目的は、ヒトの音楽リズムの知覚・生成能力の個人差について研究することであり、ヒトの脳が音楽の時間情報をどのように処理しているのかを解明することであった。具体目標として、①スマートホン・タブレット使用に対応した新型H-BATを開発すること、②リズム知覚生成の文化差を検討すること、③リズム知覚・生成能力の個人差に関わる脳機能構造を明らかにすることを掲げた。研究代表者の研究室に所属する大学院生(今野)の活躍により、具体目標①で掲げたH-BATのiOSアプリ開発を実現することができた。具体目標②についても、マックスプランク研究所との共同研究により、世界13カ国のリズム知覚生成パターンを国際比較することができた。具体目標③についても、ハーバード大学と共同研究により、H-BATの個人差が、小脳灰白質構造の個人差と関係していることを明らかにすることができ、査読付きの国際誌 NeuroImage 誌上に公表することができた(Paquette, Fujii, Li, & Schlaug, NeuroImage, 2017)。さらに、慶應義塾大学医学部、福島県立医科大学医学部、湘南慶育病院との共同研究の機会をいただくことで、ヒトのリズム知覚生成の個人差と、精神疾患症状・認知機能との関連、MRI・EEG・NIRSなど、各種脳機能構造イメージング指標との関連を見出すことができた。当初掲げた具体目標を達成するだけでなく、今後の研究につながる期待以上の成果を得ることができたため、「当初の計画以上に進展している」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方針として、まずは得られた研究成果を学術論文として公表することを計画している。本年度までに、ヒトのリズム知覚生成の個人差に関するデータの取得と解析を多数行い、健常者や精神疾患患者など、様々なバックグラウンドを持つ人々のリズム知覚生成の個人差について、貴重な知見を多数得ることができた。得られた成果は、国内外の学会にて、発表することができたが、学術論文として公表するには至っていない成果が多数ある。今後、得られたデータの解析を取りまとめ、文章化し、学術論文として発表できるよう、引き続き研究を推進していく方針である。また、本研究によって実現した H-BAT のiOS アプリ開発の成果を、多くの人々に使用いただけるよう、AppStore などでのアプリ配信を推進していくことを計画している。これにより、ヒトのリズム知覚生成の個人差に関する大規模データ(ビッグデータ)を今後収集してきたいと考えている。また、HBAT指標と各種脳機能構造イメージング指標との関連性を調べる中で、次の研究につながるヒントを多数得ることができた。例えば、リズム知覚生成機能と精神疾患症状・認知機能の間に、共通の神経基盤がある可能性が、本研究を実施したことで、新たに明らかになってきた。今後は、音楽やリズムに関わるヒトの脳の情報処理機構が、いかにヒトの心身健康に関連しているのかについて、引き続き、音楽神経科学(Neurosciences and Music)の観点から、研究を精力的に推進していきたいと考えている。
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Causes of Carryover |
研究者の業務の多忙、及び、研究遂行に想定以上に時間を要したため、次年度使用額が生じた。次年度の延長期間内には、補助事業の目的をより精緻に達成するための研究の実施(特に、追加実験の実施、データ追加解析、論文執筆、学会参加、論文投稿など)を計画している。
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Research Products
(17 results)
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[Presentation] Glutamate Levels in the Caudate Correlate Beat Perception in Patients with Schizophrenia2019
Author(s)
Honda S., Tarumi R., Noda Y., Matsushita K., Nomiyama N., Ochi R., Tsugawa S., Savage PE., Nakajima S., Mimura M., Fujii S.
Organizer
The 17th Rhythm Perception and Production Workshop (RPPW)
Int'l Joint Research
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[Presentation] The Beat Processing Abnormality in Patients with Treatment-resistant Schizophrenia2019
Author(s)
Honda S, Tarumi R, Noda Y, Matsushita K, Nomiyama N, Ochi R, Tsugawa S, Savage PE, Nakajima S, Mimura M, Fujii S.
Organizer
The 2019 Biennial Meeting of the Society for Music Perception and Cognition (SMPC2019)
Int'l Joint Research
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[Presentation] Cortical Thickness and Beat Processing Ability in Patients with Schizophrenia2019
Author(s)
Matsushita K., Tarumi R., Noda Y., Honda S., Ochi R., Nomiyama N., Tsugawa S., Savage PE., Nakajima S., Mimura M., Fujii S.
Organizer
The 2019 Biennial Meeting of the Society for Music Perception and Cognition (SMPC2019)
Int'l Joint Research
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[Presentation] Universal Constraints on Rhythm Revealed by Large-scale Cross-cultural Comparisons of Rhythm Priors2019
Author(s)
Jacoby N., Polak R., Grahn J., Cameron D., Fujii S., Savage PE., Lee KM., Jakubowski K., Clayton M., Margulis E., Wong P., Undurraga E., Godoy R., Huanca T., Thalwitzer T., Mungan E., Kaya E., Jure L., Rocamora M., Goldberg D., Holzapfel A., McDermott J.
Organizer
The 2019 Biennial Meeting of the Society for Music Perception and Cognition (SMPC2019)
Int'l Joint Research
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[Presentation] fNIRSを用いたビート知覚課題中の脳活動の検討2019
Author(s)
松木 友理恵, 土元 翔平, 新藤 恵一郎, 新藤 悠子, 丸山 祥, 吉岡 純希, 本多 栞, 菊池 優大, 豊田 愛莉, 今井 瑛子, サベジ パトリック, 藤井 進也
Organizer
第13回 Motor Control 研究会
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[Presentation] ミスマッチ陰性電位とリズム能力の関連性についての検討2019
Author(s)
星野 大, 高橋 雄一, 藤井 進也, 今野 嶺, 刑部 有祐, 野崎 途也, 菅野 和子, 疋田 雅之, 和田 知紘, 森 湧平, 大西 真央, 志賀 哲也, 板垣 俊太郎, 松岡 貴志, 矢部 博興
Organizer
第49回日本臨床神経生理学会学術大会
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[Presentation] 統合失調症に対するリズム改善プログラムがミスマッチ陰性電位に及ぼす影響2019
Author(s)
高橋 雄一, 星野 大, 刑部 有祐, 吉田 久美, 松本 貴智, 青田 美穂, 今野 嶺, 藤井 進也, 青木 俊太郎, 菅野 和子, 各務 竹康, 森 湧平, 和田 知紘, 志賀 哲也, 疋田 雅之, 板垣 俊太郎, 三浦 至, 大井 直往, 福島 哲仁, 矢部 博興
Organizer
第49回日本臨床神経生理学会学術大会