2017 Fiscal Year Research-status Report
ピアニストに打鍵位置を定めさせる情報のモダリティ：注意と感覚統合の観点から
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16K16484
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| Research Institution | Kyoto City University of Arts |
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Principal Investigator |
大澤 智恵 京都市立芸術大学, 音楽学部, 客員研究員 (90726093)
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| Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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| Keywords | ピアノ / 鍵盤 / 視覚 / 聴覚 / 体性感覚 / フィードバック / 触覚 |
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| Outline of Annual Research Achievements |
これまでにおこなった実験（手元の視覚情報および聴覚フィードバック情報の有無、体性感覚（触覚）情報の多少を操作した条件下で、ピアノ専攻生が音階および様々な幅の分散和音と、レパートリー抜粋を演奏）の演奏エラーデータに関して、検討の結果、さらに分析や検討を進めることで新たな実験に入る前に各種知覚情報が演奏のどのフェイズで役に立っているかを明らかにすることが可能であることがわかり、新たな実験に入る前に既存のデータからの検討を尽くしたほうが効果的と判断したため、すでに得た実験データの分析や検討に力を注いだ。例えば、同じ音型でも演奏する調を変えることで、触れる黒鍵の数が変わり、得られる触覚情報の量が変わるが、この差を変数とすることで、触覚の役割を検討できた。それをもとに、視・聴・触覚が各種音型の演奏において果たす役割のモデルを提案することができたことは、本研究課題の目指す各種情報の役割の解明において、重要な基礎的成果である。
跳躍のない順次進行のみの音型では、外界から得られる情報（視覚、聴覚、触覚）は、これまでの実験条件下であれば空間的に正確な運指には必要ないことがわかった。いわゆるミスタッチ（位置エラー）と、前の音からの移動距離のエラー（移動エラー）を分析したところ、跳躍を含む音型では、誤りを起こさないためにはもっぱら視覚情報が、すでに起きた誤りを修正するために聴覚情報、触覚情報が利用されていた。解析プログラムの作成および、結果の整理と解釈にあたっての議論では、特に共同研究者の澤井賢一氏（東京大学）の協力を得た。
これらの知見を、国際会議を含む複数の学会の口頭発表及びポスター発表で発表したほか、音楽教育の研究者で構成する「音楽の実践知」に関する共同研究発表や出版物において、解明されてきた知見やこの研究の手法が実践に即した知の解明に果たせる役割の可能性について論じた。
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| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の計画では、この年度に鍵盤上の接地点を取得するデバイスを導入し、また白鍵と黒鍵の段差をなくすなどの実験条件を設けて、体性感覚情報に焦点をあてた実験を行う予定であったが、2つの背景によりこの準備を完了し実験実施に入ることができなかった。第一には、上記にも挙げたように、これまでの実験データの解析の試行錯誤と解析結果の解釈のロジックを整理することにまずは注力したことが挙げられる。これは新たにわかったことをもとに研究上の必要に応じておこなったことであるため、積極的に計画を変更したという側面があり、この点においては遅れとは必ずしも言い難い。一方、新たな実験系確立の作業を分析と並行して進めることが十分にできなかった背景には、この年度に限って、研究代表者がポスドク研究員として従事した他のプロジェクトと、以前より従事していた非常勤講師としての職のために、本課題実施機関での作業時間が大きく制限されてしまったことがある。各種業務を請け負う際にこのような状況を避ける努力をしたものの、職業としての研究キャリア継続のために避けきれなかったことは痛恨である。2018年度には常勤職に着任し1箇所にて研究をおこなうことができるようになったため、巻き返しに最善を尽くす所存である。計画変更の面と、実際に思ったように作業を進められなかった面をあわせ、「やや遅れている」と判定した。
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| Strategy for Future Research Activity |
最終年度である2018年度であるが、研究機関の異動にともない、再度実験の環境を整える必要がある。これまでに京都市立芸術大学で購入・利用してきた物品を新所属である武庫川女子大学に移管して準備を進め、体性感覚の利用や注意を向けるべき情報モダリティに注目した実験をおこなう。また、これまでに得た実験データのうち、昨年度検討した結果必要と判断したレパートリー演奏の解析も進め、より「手になじんだ」演奏での各種情報の役割を確かめる。また、研究成果の発表としては、論文の執筆、投稿にウェイトを置きながら効率的に成果の発信ができるように努め、一方では音楽愛好家や教育者に知見を届けるための解説をWebページなどを利用しておこなう、より広い対象にむけて易しく講演できる機会を積極的に設ける、書籍の執筆に参加するなど、社会への還元にも力を入れたい。
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| Causes of Carryover |
当年度に実施する予定であった実験を次年度の実施に切り替えたため、実験関連の支出を次年度に繰り越した。次年度に、実験準備に必要な消耗品の購入にあてるほか、実験参加者謝金、実験補助者謝金を支払うことを計画している。
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