2018 Fiscal Year Research-status Report
上肢筋力のCross-educationに関わる神経基盤の解明
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16K16488
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Research Institution | Morinomiya University of Medical Sciences |
Principal Investigator |
木内 隆裕 森ノ宮医療大学, 保健医療学部, 准教授 (80711986)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 上肢筋力 / 筋力増強 / Cross-education / 両肢間転移 / 神経科学 / 脳波 / 筋電図 / 機能的連結 |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年度は前年度末に完了した研究をまとめて外部に発表した。ひとつは、自作した装置を用いた手指筋力測定の信頼性検証研究であり、結果をまとめて学会発表した。具体的には、若年健常者18名を対象として7±2日の間隔を空けながら2名の検者で3回の測定を実施した。その結果、左右の測定ともにICC(1,1)は0.90以上、ICC(2,1)は0.88以上の値を示し、十分な相対的信頼性が保証された。絶対信頼性に関してはBland-Altman分析で検討し、固定誤差も比例誤差も認められないことを確認した。また、最小可検変化量95%信頼区間を計算し、同一検者が計測する際には2.3 N以上、複数の検者で計測する際には2.9 N以上の変化が観察されたときに有意な変化を検出できることを示した。 その一方で、今後実施予定の小規模ランダム化比較試験におけるコントロール群のタスク(端座位での足背屈運動)についても、評価方法とする筋力測定の信頼性検証研究を紀要論文に発表した。具体的には、若年健常者10名の利き足を対象として、研究代表者以外の1名の検者が数日間に渡って筋力測定を実施した。その結果、ICC(1,1)は0.55~0.75の範囲であった。ICCに関する先行研究に基づいて信頼性は不十分であると解釈し、コントロール群に課すタスクを再考することとした。 当初は、さらに大脳皮質-脊髄運動神経系の機能的連結性を評価する脳波・筋電図計測法を完了させる計画であったが、研究エフォートの確保が想定以上に難しく、計測方法の吟味を行った段階で留まってしまった。補助事業期間延長の承認を受けて、今後はこの実験の遂行を喫緊の課題のひとつとして取り組む予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
科研費申請時には想定していなかった自身の状況の変化があり、採択期間を通して研究エフォートの確保が難しかった。結果的に、年度ごとの遅れが積み重なって大幅な遅れに繋がってしまった。当初の計画では、2017年度以降に(1)大脳皮質-脊髄運動神経系の機能的連結性を長期追跡できる脳波・筋電図計測法を確立し、(2)手指筋力のCross-educationに関わる神経基盤解明のための小規模ランダム化比較試験を実施することとしていた。しかし、実際に着手できたのは(1)のみであり、外部へ発表できたのはそれまでに完了した信頼性検証研究のみであったことから「遅れている」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
Cross-educationを誘導するトレーニングプロトコルについては、主に関連研究の分析によって準備しているが、確認作業が十分でない。したがって、このトレーニングプロトコルの確認作業を速やかに進める。また、コントロール群のタスクとして予定していた運動課題については、上述のとおり、介入効果を調べる筋力測定の信頼性に問題があることが明らかになった。これに対しては、他国から発表されている多くの関連研究の方法を見直し、コントロール群のタスクは安静、あるいは、運動を必要としない心理課題を課すことで対応する。 その一方で、上記(1)の大脳皮質-脊髄運動神経系の機能的連結性を長期追跡できる脳波・筋電図計測法の検討作業も併行して進める必要がある。ただし、これまでの研究エフォートを省みると同じ取り組み方では十分推進できない可能性もあるため、謝金を準備して研究補助者を確保することで対応する予定である。
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Causes of Carryover |
採択期間に予定していた実験の多くが完了しておらず、被験者謝金の支払い機会減少と、実験成果の発表機会減少につながったことが主たる理由である。したがって、補助事業期間延長の承認を受けて、その繰越金を上記(1)(2)の研究の被験者謝金、並びに、研究成果発表のための資金として活用する。また、可能な範囲で、研究補助者のための謝金としても活用する。
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