2016 Fiscal Year Research-status Report
教員養成段階における子どものつまずきに対する省察能力の変容
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16K16494
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
糸岡 夕里 愛媛大学, 教育学部, 准教授 (50387966)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 教育実習 / 教育実習指導教員の指導内容 / 教育実習生の授業力 / 省察 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,教員養成段階における子どものつまずきを把握する力に着目し,子どものつまずきをどの程度把握し,どのような指導を行ったのか,実際の指導場面と省察内容の変容を検討することにより,実践的指導力のアセスメントツールを開発することを目的としている. そこで本研究を進めるにあたり,教育実習指導教員(A大学教育学部附属中学校教諭2名)へインタビュー調査を実施し,教育実習指導教員が教育実習生に対し,①実習中に身に付けて欲しいと内容,②実習で最初に指導する内容,③実習までに身に付けて欲しい内容の3点について明らかにした.その結果,全体を観る力や臨機応変な対応力といった内容を重視していることが明らかとなった.そこで,本研究で焦点化する予定であった子どものつまずきを把握する力といった教材解釈力や生徒理解力という内容に限定せず,1年目の研究として,教育実習生の授業に対する省察場面において,教育実習指導教員がどのような指導を実践していたのか,またその結果,教育実習生の授業がどのように変容したのかを明らかにすることを目的とした. 対象はインタビュー調査を行ったA大学教育学部附属中学校教諭2名,および,その指導を受けた教育実習生3名の授業と,その省察場面とした.教育実習生の実際の授業場面,教育実習指導教員による省察場面をビデオ撮影し,最初の省察場面における教育実習指導教員の指導内容を分析の視点とし,省察前後の授業の変容について検討した. その結果,教育実習指導教員の指導内容として,一授業を余裕をもって指導できるような効果的・効率的な指導や,子どもにとってわかりやすい指導言葉いついての指導があり,その後の教育実習生の授業において変容がみられた. なお,この研究については,日本スポーツ教育学会第36回大会において発表した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の1年目に計画していた研究内容は,体育授業の模擬授業において,授業者が子どものつまずきをどの程度把握し,そのように指導したのかを分析する予定であったが,研究準備が滞ってしまい,模擬授業を対象とした研究が実施できなかった.そこで,2年目に予定していた教育実習を対象とした研究を実施することとした.本来の研究目的として,子どものつまずきを把握する力,それに対する指導に焦点化して研究を進める予定であったが,教育実習指導教員への事前インタビュー調査より,研究目的を修正した方が,より発展的な研究となると判断した.このように,研究目的には若干修正があったが,その修正も研究結果に基づく修正であり,本研究の学術的な特徴である教育実習で身に付ける実践的指導力についてののアセスメントツールを開発することについては問題ないと判断した.修正した研究内容について,一定の成果が得られており,2年目への研究に向けて見通しをもつことができた. また,1年目の研究成果についても日本スポーツ教育学会第36回大会において発表し,多くの研究者からの意見を受け今後の研究展望の示唆を得ることができた. その他,第21回日本体育科教育学会,日本体育学会第68回大会へ参加し,教員養成や学校教育にかかわる知見を深めることができた. しかしながら,予算の執行については,研究への着手が遅くなってしまったり,研究内容の修正等もあったりしたことから当初の予算を執行するには至らなかった. 以上の理由から,予算の執行については,再検討が必要なものの,研究の進捗状況としては,概ね順調に進展していると判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究課題として,教育実習前までに身に付けておくべき力,教育実習中に身に付けるべき力のより具体を明らかにしていくことが挙げられる.そのため,当初の研究計画であった教育実習前の模擬授業を対象として研究を進める. 教員養成段階における理論と実践として,教育実習前の模擬授業等を通して身に付ける力と教育実習中に身に付ける力とは何なのか,先行研究等による情報収集に努めている.また,中四国の体育科教育を専門とする研究者によって開催している体育用紙教育研究会において,このテーマについてラウンドテーブルを開催し,各大学での教員養成や教育実習の実態をふまえた意見を得ることができると考える.さらに,第22回日本体育科教育学会,日本体育学会第69回大会へ参加し,教員養成や学校教育にかかわる知見を深めたい.AIESEP2017(International Association for Physical Education in Higher Education)といった国際学会へも参加を予定し,諸外国での教員養成にかかわる動向についても情報収集に努めたい. 2年目の研究成果の発表として,日本スポーツ教育学会第37回大会への発表を予定している.そこで多くの研究者からの意見を受けることにより,今後の研究展望の示唆を得ることが期待される.
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Causes of Carryover |
研究へ着手する時期が遅くなってしまったことや予定していた人件費・謝金が大幅に不要となったために次年度使用額が生じた.しかしながら,研究の進捗状況としては大きな問題が生じる遅延ではない. 特に,人件費の使用については,研究者自身が不慣れであったことから,研究を依頼できる人材の確保や内容について精査できず,充分に活用することができなかった.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額の使用については,一部を物品費にあて,ビデオカメラ,ハードディスクを購入することにより,データ収集を充実させたい.あわせて,人件費にあてデータ収集することによって有意義に活用していきたい.
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Research Products
(1 results)