2019 Fiscal Year Research-status Report
集団のダイナミクスを活性化するメンタルトレーニングプログラムの確立
Project/Area Number |
16K16509
|
Research Institution | National Agency for the Advancement of Sports and Health |
Principal Investigator |
江田 香織 (宮田香織) 独立行政法人日本スポーツ振興センター国立スポーツ科学センター, スポーツメディカルセンター, 契約研究員 (30612478)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | グループダイナミクス / チームワーク / 対話的競技体験 / メンタルトレーニング |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,集団内のグループダイナミクスを活性化するメンタルトレーニングプログラムを構築することを目的としている.今年度は,昨年度実施した本調査を引き続き継続し,その効果の継続を検証することが目的であった. 本プログラムは,我が国で開発されたイメージを用いたグループワークの一つであるファンタジーグループ (樋口, 2000)およびグループ箱庭療法 (岡田, 1991)を元にプログラムを構成した.一昨年よりプログラムの構成を行い、各年度ごとに課題を明確にし、修正を施してきたが、昨年度のまでの段階で、明確な競技力の向上は見られなかった.この背景として、以下の点が考えられた。 1. 継続の問題:江田ほか (2017)で実施したグループ箱庭体験を通したチームの再建においても、プログラムを2年間実施し、3年目に競技力の向上が認められた。このことからも、チームの変化が競技力向上につながるまでには、ある程度の時間がかかる可能性が考えられる。 2. 年齢的な問題:これは昨年度に引き続き課題となっていることであるが、今回の介入対象となる中学生という年齢では,自身やチームの問題に対して,どのように取り組めばいいのか分からない選手がいた.そのため,介入後期には,前期のグループワークで得た課題と現実的な競技場面での課題をすり合わせるためのミーティングやメンタルトレーニングを実施した。 上記2点を修正し、今年度も介入を継続した。その結果、選手自身が主体的にチームの課題を話し合うなどの言語的なコミュニケーションが活性化するとともに、競技力の向上が認められた。以上のことから、本介入プログラムの有効性が確認できたと考えられる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
計画当初は昨年度までで介入を終了し、今年度はこれまでの介入をまとめ、発表する予定であった。昨年度は介入により、チーム内の言語的・非言語的コミュニケーションが活性化され、チームメンバー相互の理解度が高まっているようであったが、競技力は大きく向上することはなかった。その背景に先述した「継続の問題」や「年齢的な問題」が生じている可能性が考えられたため、さらに1年間介入を継続し、上記の問題の解消を試みることとした。 具体的には、これまで同様、グループワークを実施するとともに、現実場面で生じているチームの課題について話し合う場をつくることや、選手自身がチームや自身の課題に向き合い対応していくために必要と考えられるメンタルトレーニング技法を紹介した。その結果、グループワークでの振り返りの時間に語られた他のメンバーに対する新たな気づきを競技場面でも活かしている様子が見られた。このようにチームの相互理解が深まることで、これまで以上に連携したプレーやメンバーのミスをフォローするプレーが多くなっていったようであり、競技力の向上が認められた。 このような効果の維持について検討するため,来年度も引き続きインタビュー等のフォローアップを行い,効果の検証及び今後の課題を明確にしていく.
|
Strategy for Future Research Activity |
次年度は最終年度となるため,介入対象となったチームに対して個人面談やチームの観察を行い,これまでの介入がどのように維持,展開していくのかを検討する. 課題としては,コロナウイルス感染拡大防止のため,対象となっているチームにとって目標としていた大会が中止となっている.本来は,目標とする大会での結果を競技力の指標の一つとしていたが,次年度はそれが叶わないこととなった。 本研究では,グループワークにより集団のグループダイナミクスが活性化することでチーム内の関係性の質が向上し,競技力向上が促進されることを確認してきた.その中では、メンバー相互の理解が促進され,競技力の向上だけでなく,メンバー相互の理解の深まりによる安心感や連帯感といったようなチームとしての一体感を確認してきた。次年度は、大きな大会がないことをチーム全体でどのように受け止め、活動していくかという点に焦点をあて、本介入の効果維持および発展を検証したいと考えている。
|
Causes of Carryover |
本研究で取組んでいる集団内のグループダイナミクスを活性化するメンタルトレーニングプログラムの構築において、プログラムの修正および効果の検証に時間がかかり、研究が全体として遅れている。それに伴い予算執行にも遅れが生じている。
|