2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K16518
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
横山 慶子 名古屋大学, 総合保健体育科学センター, 講師 (30722102)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 連携技能 / 練習道具 / 協調力 / 社会的な力 |
Outline of Annual Research Achievements |
複数の他者の状況変化を敏感に察知し,自己を調整する能力は,様々な社会場面で重要とされる社会技能である.本研究課題の目的は,社会技能のうちでも,集団スポーツ場面で要求される連携技能に注目し,その練習道具の効果を検証することである. 本年度は,洗練されたチームワークにみられる連携した動きを,社会行動の数理モデル(social force model)を用いた再現することに成功した.社会行動の数理モデルは,環境や他者から個人に働く「見えない力」を定式化したもので,これまで主に,群集の避難行動のシミュレーションなどで用いられていた.本研究では,このモデルがチームワークの再現に応用できると考え,サッカーの3対1ボール保持課題を行う三者の連携動作に援用したところ,熟練者は「空間力」「回避力」「協調力」といった3種類の「見えない力」を敏感に察知して行動していることが明らかになった.また,「協調力」をサポートする道具として,3者のプレイヤーをゴムバンドで繋ぐ練習道具を開発し,初心者に適用した結果,熟練者に類似した動きを確認することができた.このことから,練習道具が「協調力」を見える化することができた可能性がある. また,異なる結合タイプの2種類の練習道具を初心者に当てはめた実験データの検証を行ったところ,パス回しの回数というパフォーマンス自体には効果がないものの,熟練者にみられた同期パターンの出現頻度に関しては,道具の効果がどちらのタイプについても確認された.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初に予定していた実験計画とは異なるものの,実験データの解析と数理モデルによるシミュレーションを用いることで,本研究課題の2つの仮説(連携技能の熟練者は初心者よりも「見え」が優れている,初心者が道具を利用すると「見え」が変わる)をおおむね検証できたため.
|
Strategy for Future Research Activity |
当初の計画では,3つ目の仮説(初心者が道具を用いて練習すると熟練者の「動き」が習得できる)を最終年度までに検証する予定であった.しかしながら,学習実験を実施するためには,異なるタイプの練習道具の効果の違いを理論的に整理する必要があると考え,本年度の実施した解析を進め,論文投稿を目指す.
|
Causes of Carryover |
研究手法を視覚実験から数理モデルによるシミュレーションに切替えたことにより,実験装置を購入する必要がなくなったため,次年度使用額が生じた.今年度は,現在解析中の分析結果に関する研究ミーティングのための海外渡航費および論文投稿費等に使用する予定である.
|
Research Products
(4 results)