2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K16519
|
Research Institution | Shiga University |
Principal Investigator |
榎本 雅之 滋賀大学, 経済学部, 准教授 (40515946)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | アイルランド移民 / 近代スポーツ / フットボール / ハーリング |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、19世紀中葉、オーストラリアとニュージーランドへの近代スポーツの伝播の過程で、アイルランド移民が果たした役割を明らかにすることである。1840年代の大飢饉によって、アイルランドの多くの人々が国外に流出し、1850年代のオーストラリアのメルボルンでのゴールドラッシュが多くのアイルランド移民を引き寄せた。この時期に、アイルランド移民が関わり、近代的なフットボール、オーストラリア式フットボールが成立する。この過程で、アイルランド移民が具体的にどのような役割を果たしたのか。また、ニュージーランドの場合、フットボールに関する議論は、1870年代以降に行われるラグビーの登場を待たねばならないが、1850年代頃から移り住んだアイルランドからの入植者たちは、オーストラリアでプレイしたように、フットボールを行わなかったのか。本研究では、以上の点に着目し、近代スポーツの伝播を帝国の周縁の人々であったアイルランド移民から明らかにする。 平成28年度は、オーストラリアのアイルランド移民に着目し、先行研究の収集及び史料収集を行なった。 平成29年度は、前年度に収集したオーストラリアのスポーツに関する資料やオーストラリア国立図書館でデジタル化されている19世紀の新聞に掲載されたアイルランド移民のスポーツ活動について、整理・分析を行った。特にアイルランド移民によるハーリングに着目して分析を進め、「19世紀中葉に行われたメルボルンのハーリング」について、学会報告を行なった。加えて、ニュージーランドのアイルランド移民やスポーツ史に関する先行研究を取集し、整理した。そして、ニュージーランドのダニーデン、ウェリントン、オークランドで現地調査を行い、オタゴ大学やニュージーランド国立図書館でアイルランド移民のスポーツ活動に関する資料を収集した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成28年度は、アイルランド移民に関する先行研究の収集と、オーストラリアの近代スポーツの黎明期に関する基礎資料を収集した。先行研究やオーストラリア式フットボール史の研究者であるヴィクトリア大学のロブ・ヘス博士へのインタビューから、オーストラリア式フットボールが近代化する過程において、アイルランドの移民が関わったことが確認できたが、その詳細まで明らかにすることはできなかった。 平成29年度は、オーストラリアの近代スポーツの黎明期において、アイルランド移民が、どのように、自分たちの民族的な身体活動であるハーリングを行なっていたかに関して、その詳細を検討した。また、ArgusやAge、Heraldなどの新聞資料からハーリングに関する記事を抽出し、その整理・分析を行った。しかし、昨年度から検討しているオーストラリア式フットボールの成立の際、アイルランド移民の関わりについては、詳細な資料を手に入れるに至っていない。加えて、19世紀オーストラリアのスポーツ史に関する収集資料の分析が、予定より遅れていることから、今後は焦点を絞っての整理・分析を行い、その成果を報告したい。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は、平成29年度に学会報告した「19世紀中葉のメルボルンでのハーリング」に関する研究について、論文化し、公表する。また、分析時期を拡大し、メルボルンのハーリングの実相について、資料の分析を行い、その成果を学会で報告する。 ニュージーランドにおける近代スポーツの伝播に関して、昨年度収集した資料の整理・分析を行う。そして、アイルランドで移民に関する現地調査を行うとともに、これまでの研究の成果について、アイルランドのスポーツ史研究者と情報交換を行う。
|
Causes of Carryover |
予定よりも消耗品が安価に購入できたため。
|