2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K16529
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Research Institution | Takachiho University |
Principal Investigator |
鈴木 啓央 高千穂大学, 人間科学部, 助教 (00734758)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 身体運動の熟達化 / ダイナミカルシステム / 相転移現象 / 学習の構え / マイクロコンピューター |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,ヒトの身体運動における熟達化に潜む共通した仕組み,すなわち熟達化に潜むダイナミクスを明らかにすることである.ただし,現在までの熟達化に関する研究はある単一の運動課題の熟達化を研究対象としてきたため,様々な運動課題の熟達化を統一的に理解する理論は未だ確立されていないと言える.そこで本研究では,同一の学習者が4種の運動課題を学習する過程を縦断的に観察することで,熟達化に潜むダイナミクスを改名することを目指している. 上記の目的にあたり,本年度では卓球において複数の位置に乱順に投射されるボールに応じて複数の動作パタンを連続的に切り替えるという複合運動を対象にし,熟達化の過程を観察する計画であった.しかしながら,様々な検討の結果,この運動では熟達化の過程を観察することにおいて重要な指標となる運動結果が同定しにくい問題点があった.そのため,本年度では研究対象となる身体運動を,「出来る」「出来ない」が明確であるスノーボードまたはジェイボードという身体運動を対象とすることとした. しかしながら,これらの運動は運動範囲が広範囲に及ぶため,これまで用いていたカメラによる3次元動作解析が適用できないという問題がある.そこで,今年度ではスノーボードやジェイボードを測定するための機器の開発に注力した.具体的には,マイクロコンピューターであるArduinoを用いて,ボードもしくは身体の動きを計測するための地磁気,ジャイロ,加速度センサーと,足圧を計測するための圧力センサーを搭載した計測装置を開発した.現在,この装置がボードの動き,または身体の動きを計測するのに足る装置であることは,雪山での予備実験によって検証済みである.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究対象とする身体運動の変更はあったが,本研究計画はおおむね順調に進展していると言える.その理由として,平成28年度において開発した計測装置は,現在研究対象としているスノーボードやジェイボードといった運動にのみ利用出来るものではなく,今後本研究計画で対象としていく身体運動に広く応用でき得る装置である.加えて,この計測装置はジャイロや加速度といったキネマティクスと,足圧といったキネティクスの両側面から身体運動を計測することができる.また,この装置が雪山といった低温環境においても動作することは予備実験によって確認されている.すなわち,これらのことは,平成29年度では円滑にデータを取得することができることを示しており,実際に現在では予備実験によって取得したスノーボードのデータを分析している状況である. これらの計測装置の開発と同時に,本実験における実験状況や手続の準備も整い始めている.具体的には,家庭用ビデオでの撮影であるが,スノーボードを全く経験したことがない学習者がターンが出来るようになるところまでの過程全てを追ったビデオ映像を撮影できている.定性的な分析ではあるが,現在このデータを分析中であり本実験への準備を進めている.
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度前半では,現在取得しているデータの分析を推し進めると同時に,ジェイボードでの実験を行う予定である.ジェイボードはスノーボードと類似したスポーツであるがシーズンを選ばないスポーツであるため,現在開発できている計測装置によってボードを全く乗ることができない状態からボードを自走させターンができる状態までの動きのデータを取得し分析することができる.このデータから明らかになった知見をスノーボードでの実験に汎用し,同時に,ここでの知見を学会発表及び論文化する.また,現在取得できているスノーボードの熟達過程を撮影した定性的なデータについても学会発表及び論文化する予定である.平成29年度後半では,スノーボードの本実験を行い学会発表を行うことを目指している. 平成30年度以降では,平成29年度において実験に参加した学習者と同一の学習者を用い,それらの学習者がスノーボード及びジェイボード以外の身体運動を学習していく過程を観察していく予定である.現在考えている運動としてはジャグリングやペン回し運動である.これにより,同一学習者が種々の運動を学習していく際にみられる共通した仕組み,すなわち,身体運動の熟達化に潜むダイナミクスを明らかにしていく.
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Causes of Carryover |
申請時の研究計画では,設備備品費として3次元動作解析を行うための光学式モーションキャプチャカメラを計上していた.しかしながら,研究対象とする身体運動の変更に伴い,データ取得の方法も3次元動作解析から加速度や圧力センサーによるデータ取得へと変更した.これらのセンサー類は光学式モーションキャプチャカメラと比較すると安価であり,この差額分が次年度使用額が生じた理由である.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度において開発した計測装置は既製品ではなく申請者の自作であるため,既製品と比較すると破損しやすいという問題がある.そのため,実験を円滑に行うために計測装置を複数用意する必要があり,次年度使用額はこの費用に使用することを考えている. また,スノーボードについて学習実験を行う場合,実験期間も3日から7日程度必要になると考えられる.そのため,次年度使用額を実験参加者への謝金や必要経費に充てる予定である.加えて,実験用のスポーツ用具も用意する必要があるために,この費用にも使用する予定である.
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