2016 Fiscal Year Research-status Report
重度視覚障害短距離選手に対する最適な伴走動作を量的要因と質的要因から構築する試み
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16K16533
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
近藤 克之 日本大学, スポーツ科学部, 講師 (10459943)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 伴走動作 / 重度視覚障害短距離選手 / 障害者スポーツ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,陸上競技短距離種目においてパラリンピックに出場するような,熟練伴走者の伴走動作と選手の疾走動作をバイオメカニクス的手法と質的調査法(半構造化インタビューなど)を用いて解析し,手足の動作をすばやく同調させるための方法や特徴を量的および質的に明らかにし,最適な伴走動作についての基礎的資料を得ることである.このことを達成するために,研究1)伴走者の伴走動作が選手の疾走動作に及ぼす影響,研究2)伴走者の伴走位置や走リズムの違いが選手の疾走動作に及ぼす影響,の2つの研究からなる研究実施計画をたて,解析や調査を進めている.短距離走での伴走動作は,選手と伴走者が手足の動作を「すばやく」同調させて並走する必要があると言われている.研究1)と研究2)に向けた予備調査では,参与観察的な立場を構築することによって,選手と伴走者の「距離感」や伴走者の「腕ふりのリズム」,伴走者による疾走中の情報の提供方法など,短距離走の伴走者に求められることが明らかになってきた.重度視覚障害選手にとっては,音に向かって疾走する音源走よりも,伴走ロープをお互いに握るなどし,お互いの位置関係に配慮し,リズミカルにすばやく同調させる動作を疾走中に行うことのできる伴走者は欠かせない存在であることも明らかになってきた.研究2)では,伴走者の腕ふりの速さを主観的に3段階に分け,なおかつ選手との位置関係も3条件とし,どの段階と条件の組み合わせが最適かどうかを分析する.重度視覚障害者のなかには,生まれてから「自分の走る姿を一度も見たことがない」「全力疾走したことがない」「どのように走れば良いのか分からない」といった人たちが多数いる.そのような状況に対して本研究は,効果的な指導や対応を進めるための基礎的な資料を示すことになると考えている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究1)と研究2)について,被験者として想定していた,パラリンピックへの出場を目指す競技力の高い選手と伴走者が,リオデジャネイロパラリンピックへ向けてのトレーニングを優先していたこともあり,実施予定であった量的分析としてのスポーツバイオメカニクス的手法を用いた分析の件数が予定よりも少ない.一方で,質的分析としての半構造化インタビューや参与観察的記述は継続的に進めることができている.平成29年度は,実施計画にて特に研究2)で立案していた実験を予定通り行う.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題においては,いくつかの条件を設定し競技力の高い選手と伴走者の関係を元に,主に実験的条件下で「最適な」伴走動作を検討してきている.本研究課題によって得られた成果を元に,これから(はじめて)陸上競技の短距離走に参加し,より良い並走動作を構築していく重度視覚障害者と伴走者の関係の発達過程を縦断的(段階的)に評価していく観点を加えていきたいと考えている.
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Causes of Carryover |
申請当初,予算の上限の関係で計上することができていなかったが,平成29年度も継続して使用する動作解析用のノートパソコンが必要となり,3台購入したためである.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度に購入する物品はないため,実験測定時の験者派遣に係る旅費やデータ処理のためなどの人件費として使用したいと考えている.また,国際学会にて発表する予定のため,その旅費等に使用したいと考えている.
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