2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K16534
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
三浦 哲都 東京大学, 大学院総合文化研究科, 助教 (80723668)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 社会性 / 数理モデル / 協調ダイナミクス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、古今東西人間社会に遍在していた他者との運動同期に着目し、二者一体化の神経機構を「運動科学―社会心理学―脳科学」の学際手法を用いて解明することである。本年度は、昨年度から引き続き行っている二者の引き込み現象のモデル化と社会性が二者の引き込みに与える影響を検討する研究を行った。 まず二者の引き込みのモデル化について述べる。被験者に二人一組で向きあって立ってもらい、リズミカルな膝の屈伸運動を行わせた。運動の周波数はメトロノームで規定したが途中でメトロノームを止め、被験者にはそのまま同じリズムで運動を継続してもらった。その結果、同期し続けるペアや、同期しないペアなど多くの振る舞いが観察された。系の時間発展を記述する力学的なモデルを仮定することにより、時系列データの背後にある系が持つ潜在的な結合強度を推定した。その結果、背中合わせでリズム運動を行う条件では結合強度はほぼ0であり、結合が存在しないことが示唆された。一方向かい合ってリズム運動を行った条件では結合強度が0に比べて有意に大きく、結合が存在することが確認された。現在この結果を論文にまとめている。 次に社会性が二者の引き込みに与える影響について述べる。二者の運動の引き込みには社会性が関わっていることを示唆する研究が報告されている。これらの研究では、社会性と関わる精神疾患の患者と健常者とを組み合わせ協調運動を行わせていた。そのため、これらの先行研究の知見が健常者同士の協調運動にも当てはまるのかどうかは検討されていなかった。本年度はこれに関する研究を行い、健常者であっても二者の社会性の差が協調運動に影響を与えることが示唆された。この結果については、論文をまとめ投稿し現在査読中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、古今東西人間社会に遍在していた他者との運動同期に着目し、二者一体化の神経機構を「運動科学―社会心理学―脳科学」の学際手法を用いて解明することである。本年度は、二者の視覚的結合をモデル化し、現在論文をまとめている最中である。また社会性と協調に運動に関する研究はすでに論文にまとめ投稿し、現在査読中である。そのため進捗状況はおおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度は、二者の運動同期の時間発展(二者が社会相互作用を重ねるとどのように変化していくか)を検証し、脳活動計測へとつながる行動指標の解明を目指す。現在予備実験として、物理的に接触している二者や、コミュニケーションを続ける二者の姿勢動揺を計測している。この時の姿勢動揺に対して非線形力学系や複雑系の解析を行い、社会相互作用をしている二者の姿勢動揺の背後に潜む協調ダイナミクスを明らかにしていく。
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