2016 Fiscal Year Research-status Report
競技現場で活用できる卓球のゲーム分析・評価システムの開発
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16K16539
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Research Institution | Niigata Institute of Technology |
Principal Investigator |
上島 慶 新潟工科大学, 工学部, 助教 (70751824)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 卓球 / ゲーム分析・評価 / リアルタイム / 定量化 / ボール落下位置の推定 / AEセンサ / 振動分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,卓球競技の戦術的要素である「打球コース」・「ボールスピード」・「飛行時間(ピッチ)」・「ボールの回転数」・「ボールの回転種」を「映像分析」と「卓球台の振動分析」を用いた工学的観点から即時的に定量化できる方法論の構築である. 平成28年度は,広帯域AEセンサを用いて効率的にボールの落下位置を計測及び分析することによって,「打球コース」・「ボールスピード」・「飛行時間(ピッチ)」を即時的に定量化する方法論の検討を行った.検証方法としては,まず①ボールが落下した際に得られる振動の絶対値の比率からボール落下位置の推定を検証した.次に②ボールが落下した際に得られる振動の時間差から落下位置の検証を行った.検証の結果,①と②のいずれの方法論もボール落下位置の推定は困難であった.AE波は卓球台上全面において音速で伝播するとともに,AE波の発生位置と計測位置の距離が等しければ減衰量も等しくなる.そのため,3個以上のAEセンサを配置すれば,それらの等振幅円の交点としてボールの落下位置を推定することが可能である.しかし,実際の計測では,卓球台の不均一性やAE波の境界面における反射・透過等の影響により,大まかな傾向は一致するものの,AE波の振幅値や到達時間は異なるものであった. そこで,次の検証方法として,等振幅円の考えを拡張し,等振幅曲線を含む領域を求め,全てのセンサの領域が重なる部分をボールの落下位置として推定を行なった.実際の推定値は,推定領域の重心とした.検証の結果,推定した距離の誤差平均は10cm以内,最大でも35cm程度であり,比較的良好な結果が得られた.また,等振幅曲線を利用した落下位置の推定方法は,全ての落下位置を推定できることが可能できることが明らかになった.さらに,処理時間は0.05s程度であり,リアルタイムで戦術を分析できる可能性も示された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成28年度に計画していたAEセンサを用いた卓球台の振動分析によるボール落下位置の推定は,想定していた方法論では推定困難であったが,別の方法論を用いることによって全てのボール落下位置を推定できる可能性が示された.また,本研究の研究課題は,「競技現場で活用できる卓球のゲーム分析・評価システムの開発」であるため,リアルタイムで処理ができる方法論であることが前提であるが,本研究で用いた方法論は,処理時間も問題なく,当初計画をしていた方法論とは異なるものの,研究成果は順調に得られている. また,平成29年度に計画している映像分析によるボール落下位置の予測及び推定についても並行して進めており,計画通りに成果を得られている.映像分析では,これまでの手法では,撮影されたボールの残像の検出に卓球台上のネットや白線を含めると,ボールの軌跡と誤検出することや,ボールのバウンド位置の映像を捉えられない場合は,ボールの落下位置を推定できない課題があった.そこで,これまでの手法にノイズ除去処理を追加して検出範囲を緩和するとともに予測処理の一部を変更し,ボールの落下位置の推定・予測の精度改善に取り組んだ.その結果,これまでの課題は改善することができ,実際の戦術分析での利用可能な精度までボールの落下位置を定量できることが明らかになっている. 以上のことから,振動分析及び映像分析によるボール落下位置の推定を並行に進めており,成果も計画通りに得られている.
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は,振動分析によるボール落下位置の推定と映像分析による推定の更なる精度向上に取り組む.振動分析では,推定誤差の分布をみると卓球台半面の四隅にセンサを設置した場合,特に全てのセンサから遠い中央付近において推定誤差が大きい傾向にあり,誤差の最大値は約77cmであった.これは,各センサの抽出領域の範囲が広くなり,全てのセンサの重複領域からボールの落下位置を推定しても実際の落下位置を捉えきれないためであると考えられる.これを裏付けるかのように,センサの位置を卓球台半面の内側に設置した場合では,全体的に誤差の大きさは縮小し,センサの距離が近くなったことで中央付近の誤差は改善された.しかし,これ以上中央にセンサを近づけすぎると周辺の推定に誤差が生じる可能性が考えられるため,より推定精度を向上させるためには,中央にセンサを追加する必要性が挙げられる.また,この推定方法は,等振幅曲線を含む領域をセンサの振幅値を含んでいる一つの等高線領域で近似しており,必ずしも振幅値が中央となっている領域を抽出しておらず,落下位置の可能性が低い領域と逆に落下の可能性が高い領域を含んでいない可能性もあるため,中央値となっている領域を用いることでより推定の精度を向上できる可能性がある.これらの課題改善に取り組むことにより精度の向上を目指す.なお,今年度の推定では,等高線の算出と落下位置の推定に使用したボール落下位置のデータが同一であるため,提案した処理方法の有効性の検証も行なっていく. 映像分析によるボール落下位置の推定では,一般的な蛍光灯などの照明で撮影をした場合,残像に2倍の電源周波数が同期した明暗の模様ムラが生じ,ボールの残像を抽出するのが困難になる課題がある.そこで,平成29年度は,ハイスピードカメラを用いて撮影を行い,ボールの残像抽出を明確化することにより解決を図っていく.
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Causes of Carryover |
平成28年度に購入した計測機器(センサおよびプリアンプ)が見込み予算よりも若干少額で済んだため次年度使用額が生じた.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度に生じた残額は,平成29年度に購入予定の計測機器の購入に充てる.
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