2016 Fiscal Year Research-status Report
イノベーションのジレンマ論を応用したプロスポーツ経営モデルの構築
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16K16541
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Research Institution | Niigata University of Health and Welfare |
Principal Investigator |
山本 悦史 新潟医療福祉大学, 健康科学部, 助教 (30757670)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | プロスポーツ / 地域スポーツ / Jリーグ / ローカライズ戦略 / 地域イノベーション |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、プロスポーツクラブの創出および発展の過程で生じた様々な経営的課題の実態を浮き彫りにし、これらの現象が「イノベーションのジレンマ」の観点からいかなる説明を行うことができるのかといった点について検討することを目的として、2年間の研究を進めている。今年度は、Jリーグに所属する複数のクラブ(以下「Jクラブ」とする)とそのホームタウン内部の諸アクターを対象とした事例分析を通じて、Jクラブの創出過程及び運営過程で生じた矛盾的現象の実態を浮き彫りにすることを試みた。具体的には、①Jリーグへの新規参入を目指す過程においてJクラブと共同運営関係にあった地域スポーツクラブが、Jクラブとのパートナーシップ解消後に一時的な経営危機に陥ったという事例、②Jクラブのホームタウン広域化の過程における中心的な活動拠点の設定をめぐって、Jクラブが複数の地域間で板挟みの状況に直面したという事例を取り上げた。今年度に得られた結果は以下の通りである。第一に、Jリーグにおけるクラブ数の拡大を可能にする合理的システムの構築とこれに伴うプロスポーツクラブ経営の支配的モデルの確立が、地域スポーツ発展の過程で求められる地域住民の自発性・主体性を抑制することに結びついている可能性が確認された。第二に、Jクラブに対する資源動員を正当化するための物語の提示(ストーリーテリング)が,その後のJクラブの戦略展開に制限をもたらす可能性が確認された。これらの現象は、Jクラブの創出を通じた地域イノベーションを効率的かつ効果的に推進するための合理的行為が、逆に地域社会におけるスポーツ価値の創造やJクラブの経営に一種の「ジレンマ」ともいうべき状況をもたらしている可能性を示唆するものであると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
プロスポーツクラブの創出及び運営の過程で生じるジレンマの実態把握は当初の研究計画どおりに進められており、これらの研究成果は国内の学会における口頭発表や図書(共著)の出版等を通じて社会発信された。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究方策としては、引き続きプロスポーツクラブの創出とその後の戦略展開の過程で生じるジレンマの実態把握を進めていくとともに、これらの背後に存在するメカニズムの分析を可能にする理論枠組みの構築及びその精緻化を行っていく。現時点において、研究計画に大幅な変更が生じることは予想されないが、インタビュー対象となる組織や個人の状況等を鑑みながら、必要に応じて当初の計画に若干の修正を加えていく。研究成果の公表に関しても、学会発表や学術論文への掲載等を通じてより積極的な形で取り組んでいく予定である。
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Causes of Carryover |
関東圏を中心とした現地調査に際して、本研究の事例分析に必要となるデータを当初の予定よりも短い期間で収集することができた。また、研究協力者との打ち合わせに関しても、学会大会の期間等を利用することが可能になるなど若干の変更が生じた。こうした理由から、特に旅費(交通費および宿泊費)の面において当初の計画よりも少ない金額での予算執行が可能となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度の研究計画においては、これまでの関東圏における現地調査に加えて、九州地方における現地調査の計画が含まれている。これらの現地調査を計画通りに進めていくと同時に、次年度には学会大会での発表、論文投稿等を通じて、本研究の成果をより積極的な形で行っていくことを目指している。学会発表や論文投稿にあたっては、研究協力者との打ち合わせをより綿密に行っていく必要性が生じることから、未使用額はその経費に充てることとしたい。具体的な経費としては、研究協力者との打ち合わせのための旅費および資料印刷費、関連図書購入費、研究成果報告書作成費等である。
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Research Products
(2 results)