2016 Fiscal Year Research-status Report
投げの正確性を高めるためにリリースの時間窓は伸ばせるか?
Project/Area Number |
16K16545
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Research Institution | NTT Communication Science Laboratories |
Principal Investigator |
那須 大毅 日本電信電話株式会社NTTコミュニケーション科学基礎研究所, スポーツ脳科学プロジェクト, リサーチアソシエイト (20758411)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 投げ動作 / タイミング / 野球 / モーションキャプチャ |
Outline of Annual Research Achievements |
モノを正確に投げるためには,リリースのタイミングを高精度で制御する必要がある.本研究では,野球の投球およびバスケットボールのシュートを対象に,熟練選手がリリースタイミングの時間窓を長くするような運動を習得しているかどうかを明らかにする。 28年度は、野球を対象に熟練投手のリリースタイミングとボール到達点の関係について検討した。投手経験者を対象に、モーションキャプチャを用いて投球動作およびボールの挙動を計測した。まず、ボール到達点とボール到達点に力学的に影響するリリース変数(位置、初速度、投射角度、スピン)の関係性を明らかにするために、重回帰分析を実施した。その結果、いずれの被験者においても,投射角度の影響が最大であることが明らかになった.ある被験者の場合,投射角度が1.65 度ずれると,ホームベース上では32cmのずれにつながることが示された。次に、ボール到達点への影響が最大だった投射角度とリリースのタイミングとの関係を明らかにするために、単回帰分析を実施した。その結果、先に例に挙げた被験者の場合、リリースのタイミングが2msずれると、1.64度の投射角度のずれにつながることが明らかとなった。一方、リリースタイミングと投射角度にはほとんど関連がみられず、手の運動軌道のばらつきの方がボール到達点に影響している被験者もいた。これらの結果から、リリースのタイミング(時間)のばらつきと運動軌道(空間)のばらつきのどちらがよりボール到達点に影響するかについては、個人差があることが示唆された。 これまでのデータからは、コントロールが優れていることとリリースの時間窓の長さの関連は示されていない。野球の投球のようにダイナミックな動作では、空間的な運動のばらつきを抑えることが困難であり、少なくとも今回の被験者レベルでは、時間的ばらつきを許容するような運動の獲得には至っていないと推察される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、リリースタイミングの許容可能性について、28年度は野球投手、29年度はバスケットボール選手を対象に検証する計画である。28年度は、当初予定通り野球投手を対象に実験を遂行し、得られた成果を学会で発表した。ただし、成果の論文への投稿には未だ至っておらず、引き続き分析、執筆を進める。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は、バスケットボール選手を対象とした実験を予定している。これまでの研究内容と同様、リリースの時間窓の長さに焦点を当てた分析を進め、得られた成果は国内外の学会および論文によって公表する予定である。
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