2016 Fiscal Year Research-status Report
プレッシャー下におけるアスリートの実力発揮の成否を分ける要因の質的・量的研究
Project/Area Number |
16K16556
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Research Institution | National Agency for the Advancement of Sports and Health |
Principal Investigator |
佐々木 丈予 独立行政法人日本スポーツ振興センター国立スポーツ科学センター, スポーツ科学部, 契約研究員 (40772554)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 心理的プレッシャー / 実力発揮 / 質的研究 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、アスリートにとっての重要な克服課題である「心理的プレッシャー下での実力発揮」をテーマとし、プレッシャー下での実力発揮の成否を分ける要因を、質的研究の手法と量的手法を組み合わせて複合的に明らかにすることを目的としている。平成28年度は、現役アスリートを対象とした面接調査とその内容の質的分析により、プレッシャー下で実力発揮に成功した過程と失敗した過程のそれぞれについて帰納的モデルを生成し、これらを比較することを目的とした。調査では、全国レベル以上の競技会への出場経験を有し、過去に大きなプレッシャーの元で実力発揮に成功した経験と失敗した経験の両方を有する現役アスリート13名に面接調査を行なった。調査では、(1)プレッシャーとしてどのようなものを感じたか、(2)プレッシャーにより心理、生理、行動の各側面でどのような症状が発現したか、(3)各側面で生じた症状に対してどのような対処を行なったのか、(4)用いた対処方略はどのように機能したのか、の4つを基幹質問項目とした。面接内容はICレコーダーで録音した。今後は、録音した面接内容をテキストデータ化しグランデッド・セオリー・アプローチによる帰納的な分析を進める予定である。 本研究では面接調査により、プレッシャー下での実力発揮と関連する要因を帰納的に明らかにすることをねらいとしている。そして、これが達成されることにより、これまで実験的に明らかにされてきたプレッシャー下のパフォーマンスの特徴が、アスリート自身にとってどのように体験されているのかについての示唆が得られる。これにより、現場での活用が期待される応用科学としてのスポーツ心理学の基盤を理論的に強化することができる。 さらに次年度以降はこの研究を発展させ、質問紙調査による量的な観点から知見を強化する計画である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
調査対象者となるトップアスリートの心理面への配慮のため、調査開始時期が予定よりも半年遅れた。当初の予定では、平成28年6月からのインタビュー調査開始を予定していたが、研究倫理の審査の過程で、オリンピックの選考や出場を控えるアスリートへの配慮を踏まえ、調査開始時期を調整するべきであるとの指摘があった。これを受けて、調査開始時期を予定よりも半年遅らせて12月開始とした。以上が本研究の進捗が遅れている理由であり、倫理面への配慮であるため十分に妥当であると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
研究の流れは当初計画していた通りに行う。今後は、インタビューデータを分析し、知見を抽出する作業を行う。その後、迅速に論文化し、国際誌に投稿を行う。さらに、計画にある質問紙調査の実施に移る予定である。
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Causes of Carryover |
差額が生じた最も大きな理由として、研究打ち合わせに係る旅費の使用が少なかったことが挙げられる。研究打ち合わせはデータ収集後の分析や解釈を目的としていたが、前述の通りデータ収集が遅れたため未だ十分に実施することができていない。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
現在、データ収集は概ね完了しているため、今後はデータ分析や解釈を行う予定である。その際には予定どおり研究打ち合わせが必要となるので、その旅費として使用する予定である。
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