2018 Fiscal Year Research-status Report
競技前のウォーミングアップにおいて短時間の静的ストレッチングは効果的なのか?
Project/Area Number |
16K16570
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Research Institution | Kobe International University |
Principal Investigator |
武内 孝祐 神戸国際大学, リハビリテーション学部, 助教 (10738058)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 静的ストレッチング / スティフネス / 短時間 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は2つある。第一に、実際のスポーツ現場で利用されている静的ストレッチングの実施方法を明らかにすることである。第二に、実際のスポーツ現場で利用されている静的ストレッチングの効果を検証することである。 前年度までの研究で、スポーツ指導者を対象に静的ストレッチング実施状況のアンケート調査を実施した。その結果、スポーツ現場においては、柔軟性向上と障害予防を主な目的として、約20秒間の静的ストレッチングが実施されていることが明らかとなった。 本年度は、20秒間の静的ストレッチングの効果を検証した。対象は健常成人20名とし、対象筋は右ハムストリングスとした。なお、神経筋疾患の既往があるものは除外した。すべての対象者には事前に本研究の参加に関して説明をし、同意を得た。20秒間の静的ストレッチング前後で柔軟性と筋力を測定した。柔軟性の測定項目として、関節可動域、受動的トルク、筋腱複合体スティフネスを測定した。また、筋力の測定項目として等速性収縮時の膝屈曲トルクを測定した。その結果、20秒間の静的ストレッチング後は関節可動域と受動的トルクは増加したが、筋腱複合体スティフネスおよび膝屈曲トルクは変化しなかった。これらの結果から、実際のスポーツ現場で利用されている静的ストレッチングでは、軟部組織(筋や腱)の柔軟性は変化しないことが明らかとなった。 以上の結果は、実際のスポーツ現場で実施されている20秒間の静的ストレッチングは、その目的である筋の柔軟性向上に効果的ではないことを示唆するものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実際のスポーツ現場で利用されている静的ストレッチングの効果を検証することができたことが、本年度の研究で成果としてあげられる。本年度の研究結果では、実際のスポーツ現場で利用されている短時間の静的ストレッチングが筋の柔軟性向上に効果的でないことが示された。しかし、限られた時間の中で実施するスポーツ活動において静的ストレッチングの時間を延長することは現実的に難しい。よって、今後は、ストレッチング様式を変更するなど他のストレッチング方法を用いて短時間で効果的に柔軟性を向上させることができる方法を検討していきたいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はストレッチング様式を変更することで、20秒間で筋の柔軟性を向上することができるストレッチング方法を検討する。具体的にはPNFストレッチング(ホールドリラックス)と呼ばれる、静的ストレッチングよりも関節可動域改善効果が高いストレッチング方法を用いる。PNFストレッチングでも筋の柔軟性に変化が見られない場合には、コンスタントトルクストレッチングを実施する。コンスタントトルクストレッチングは等速性筋力測定計を用いて行う静的ストレッチングであるため、実際のスポーツ現場で同様のストレッチングを実施することは難しいが、短時間で効果的なストレッチング方法を検討する上で基礎的なデータとなると考えている。 またこれまでに得られた研究成果においては、引き続き学会および論文を通して情報発信を行っていく。
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Causes of Carryover |
2018年度の研究により、スポーツ現場で実際に用いられている静的ストレッチングは筋の柔軟性向上に効果的ではないことが明らかとなった。本研究結果をスポーツ現場に還元するためには、筋の柔軟性を向上することができる代替案を検討する必要があると考える。そこで、ストレッチング様式を変更することで、効果的に筋の柔軟性を向上させることができるかどうかを検討することとした。 上記の理由で、本来の研究機関は2016年度から2018年度の3年であったが、2019年度まで延長申請を行った。それに伴い、2019年度の研究予算として次年度使用額が生じている。
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