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2016 Fiscal Year Research-status Report

日常性ストレスに伴う生体適応反応と回復過程の定量評価に基づく心の健康状態把握

Research Project

Project/Area Number 16K16582
Research InstitutionAino University

Principal Investigator

林 拓世  藍野大学, 医療保健学部, 講師 (40582862)

Project Period (FY) 2016-04-01 – 2019-03-31
Keywordsストレス / 脳・神経 / 情動 / 生体適応反応 / 脳波
Outline of Annual Research Achievements

本研究では,「日常性ストレスに伴う生体適応反応と回復過程の定量評価に基づく心の健康状態把握」を目的として,当該年次は情動を起因としたストレスの影響を調査した.情動を起因としたストレスには五感を介した入力が上げられ,さらに認知や判断,対象者の気質を介することで影響の程度が変化するとされている.そこで,安静,快,不快情動を伴う受動的作用の評価に(1)視聴覚情動負荷と(2)匂い情動負荷,また認知や判断を伴う能動的作用の評価に(3)色と文字によるストループ課題を作成した.
視聴覚情動負荷とストループ課題は健常成人10名を対象に脳波,心電図,脈波,唾液試料を測定し,実験前の気分プロフィール検査(POMS)により低疲労群と高疲労群に分類した.結果,視聴覚情動負荷では,低疲労群の左側中心-側頭領域において,快刺激は安静刺激と比較して刺激後の100msでθ波帯域の位相非同期事象関連同期活動が有意に高値を示した.ストループ課題では,低疲労群の右側頭頂-後頭領域において,刺激前と刺激後の200ms及び400msの比較で,タスクの難易度によりα波帯域の位相同期事象関連同期活動に有意な差が認められた.これにより,健常者の疲労蓄積による生体への影響性は,情動や認知の処理を担う脳の領域で評価することができると示唆された.
また,匂い情動刺激は健常成人6名を対象に脳波,心電図,脈波を測定し,線香,ラベンダー,スカトール(不快臭)の匂いを室内に充満させて刺激を行った.α波帯域のパワースペクトル値を評価した結果,刺激直後の20秒間において,線香とラベンダーは不快臭と比較して左前側頭部で有意に高値を示し,線香は不快臭と比較して右中心部において有意に高値を示した.これにより,充満された空間の中では,脳への影響性は匂いを感受した直後で最も高まり,その匂いの種類や嗜好性により影響する領域や活動性が変容すると示唆された.

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

3: Progress in research has been slightly delayed.

Reason

日常性ストレスの要因として取り上げている情動ストレスについては,日常生活より情報を最も多く獲得する視覚と聴覚,及び環境に蔓延することで長時間暴露される可能性の高い嗅覚のそれぞれについて,実験課題の作成及びその評価を進めている段階にある.匂いに伴うストレス反応や回復作用については,並行して文献調査を進め,その際に取りまとめた内容を総説として報告している.また,五感からの受動的作用だけではなく,一定水準のストレス課題を被験者が能動的に取り組むことによる実験課題の評価を進めている.これらの結果については,脳波を中心に経過報告を国内学会で発表しており,異なる評価方法による結果を別の学会にて報告する予定にある.
もう一つの日常性ストレスの要因として取り上げている情報ストレスについては,携帯端末を利用した実験課題の作成と測定を進めている段階であり,その一部の結果については学会で報告できるように準備をしている.
しかし,いずれの実験についても自律神経機能や唾液試料による評価,また十分な被験者数を確保できていないことから,当初の予定より若干遅れが生じている.

Strategy for Future Research Activity

作成した日常性ストレスを起因とした各実験課題を用いて,神経系・内分泌系・免疫系に基づく生体適応反応の評価を進める.既に測定を進めている実験課題については,評価の遅れている自律神経機能や唾液試料の解析を行い,脳機能活動や心理学的検査による指標間の相互作用を評価する.並行して,各実験課題でさらに被験者を募り,その上で評価精度の向上を図る.
また,ストレス負荷後の回復過程を評価するに当たり,一定水準のストレス負荷を伴う課題の確立やその評価方法の作成を進めていく.回復過程の評価においても,被験者自身が回復に努める能動的回復と,周囲環境より状態回復を促進させる受動的回復を図る手法の検討を進める.
各実験課題の解析については,それぞれの専門分野における研究者との意見交換により結果を取りまとめ,一定水準の結果もしくは特徴的な傾向が認められた時点で学会への報告及び論文誌への投稿を進める.結果に疑問点が認められた際には,早期の段階で見直しを図り,必要であれば該当する指標について再解析を行う.並行して,これまでの研究報告の調査,学会等における関連報告の聴講,及び専門とする研究者への意見を伺うことで検討を重ね,最終的な結論としてまとめる.

Causes of Carryover

情報ストレス課題の作成において,当初予定していたプログラミング言語からの被験者の操作に伴う同期信号の制御が困難であったことから,より汎用性の高い言語に変更している.これに伴い,より安価で同等の性能を有するタッチパネル式ディスプレイを用いた実験系の評価を進めていることから,一部の設備備品で購入が遅れている.
また,当初の購入予定であった一部の物品,特に唾液試料の解析を進めるに必要な設備備品と消耗品について,採択後の助成金額から本研究に影響のない範囲で調整をしている.また,生体試料を測定するための試薬は温度管理に厳密な保存条件が規定されていることから,可能な限り測定検体の数が揃った時点で購入を進めることが適当と判断したため,次年度使用額が生じている.

Expenditure Plan for Carryover Budget

情報ストレス課題で購入予定であった設備備品について,より汎用的に利用される携帯端末下で実行できるように構成及び移植を進め,併せて,携帯端末の購入を進める.唾液試料の消耗品については,一定数の生体試料が揃った時点で,解析に必要な試薬の購入を進める.
解析により得られた結果については各種関連学会等で報告,併せて本課題に関連した情報収集をするため,参加費や旅費等で必要となる資金として使用することを計画している.

  • Research Products

    (4 results)

All 2016

All Journal Article (1 results) (of which Peer Reviewed: 1 results) Presentation (3 results)

  • [Journal Article] 匂いに伴う生体のストレス反応と脳波計測による評価2016

    • Author(s)
      林拓世
    • Journal Title

      アロマリサーチ

      Volume: 17 (3) Pages: 203-207

    • Peer Reviewed
  • [Presentation] 客観的計測による健常者のストレス状態評価2016

    • Author(s)
      林拓世
    • Organizer
      計測自動制御学会 ライフエンジニアリング部門シンポジウム2016
    • Place of Presentation
      大阪国際交流センター(大阪府・大阪市)
    • Year and Date
      2016-11-03 – 2016-11-05
  • [Presentation] 疲労状態の違いによる情動及び認知課題に伴う脳機能活動性2016

    • Author(s)
      林拓世,水野(松本)由子,外池光雄
    • Organizer
      第46回日本臨床神経生理学会学術大会
    • Place of Presentation
      ホテルハマツ(福島県・郡山市)
    • Year and Date
      2016-10-27 – 2016-10-29
  • [Presentation] 室内環境に充満した匂いに対する脳機能影響性評価2016

    • Author(s)
      熊田康人,林拓世,堀野留以,西森聡一郎,鳥毛逸平,山本勝,外池光雄
    • Organizer
      第46回日本臨床神経生理学会学術大会
    • Place of Presentation
      ホテルハマツ(福島県・郡山市)
    • Year and Date
      2016-10-27 – 2016-10-29

URL: 

Published: 2018-01-16  

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