2017 Fiscal Year Research-status Report
日常性ストレスに伴う生体適応反応と回復過程の定量評価に基づく心の健康状態把握
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16K16582
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Research Institution | Aino University |
Principal Investigator |
林 拓世 藍野大学, 医療保健学部, 講師 (40582862)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ストレス / 脳・神経 / 情報 / 脳波 / 心理学的検査 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,「日常性ストレスに伴う生体適応反応と回復過程の定量評価に基づく心の健康状態把握」を目的とする. 具体的には,脳波,心電図,脈波により神経系,生体試料検査により内分泌系と免疫系を計測し,心理学的検査により対象の気質やストレス状況を把握することで,次の2点を評価する.1つ目に,「日常性ストレス因子に伴う心身への影響成分抽出」により社会的に問題視されているストレス因子に伴う生体影響性について健常者を対象に把握する.2つ目に,「日常性ストレスに伴う神経系・内分泌系・免疫系に基づく生体適応反応と回復過程の定量評価」を行うことで,ストレス状態からの回復過程評価とその因子の抽出を行う. 平成29年度には,日常性ストレス因子として,(1)嗅覚刺激による情動ストレス課題と(2)情報端末の操作による情報ストレス課題について検討した.解析は各課題の刺激直後に生じる特異的な脳波信号を対象とし,刺激間の変化や心理状態の関連性を評価した.情動ストレス課題の結果では,緊張や抑うつ状態がより低い場合,快臭による刺激を受けることで脳機能活動性が高まることが確認された.不快臭については心理状態の違いによる脳機能活動性に差はなく,匂いを認知することで特徴的な脳機能活動性が認められた.情報ストレス課題の結果では,ストレス負荷の高い課題と比較して,ストレス負荷の低い課題の操作時で中心部,頭頂部,側頭部の脳機能活動性が高まった.また,心理的に緊張,抑うつ,怒りなどの状態にあると,脳機能活動性が低下することが確認された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
情報ストレスに対する生理学的影響性を評価するにあたり,実験課題の作成及びその評価を行い,脳機能活動を中心に解析を進めている段階にある.その際,操作者の画面操作と同期して生体信号解析をすることと,異なる情報端末上において同一の表示環境となるようにプログラム言語の選定と調整を行い,現時点で基本構成は構築できている.これらの結果の一部については心理学的影響性との関連性を評価しており,脳波を中心に国内学会で経過報告を進めている.しかし,十分な被験者数を確保できていないことから慢性ストレス反応を含めた評価には至っておらず,現時点では実験課題に伴う急性ストレス反応として生体影響性を評価している状況にある.そのため,当初の予定より遅れが生じている. また,情動ストレス負荷としてスピーチ課題の実験を実施しており,生理学的影響性の評価を並行して進めている段階にある.本実験課題においても十分な被験者数を確保できていないことから,被験者数の増員を図りつつ,結果の検討と学会への報告を進める予定にある.
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに作成した情動ストレス課題,及び情報ストレス課題に対して,被験者数を増員することで評価精度の向上を図り,さらに自律神経機能評価を含めた各種生理学的信号と心理学的作用の関連性について検証を進める.また,心理学的検査の評価法による主観的な慢性ストレス反応から被験者の群分類を行い,保有しているストレス状態の違いによる影響性を評価する.ストレス負荷後の回復過程については,被験者自身が回復に努める能動的な回復と,周囲環境の状態回復を促進させる受動的な回復措置を基に評価を行い,効果的な回復について検証を進める. 各実験課題の結果は,類似の研究課題に携わっている研究者との意見交換により評価と検証を重ねる.結果に疑問点が認められた際には,早期の段階で見直しを図り,必要であれば該当する項目について再解析を行う.一定水準の結果が認められた時点で関連学会へ報告し,複数の専門家による視点から意見を頂くことで,結果の検証と考察をまとめ,論文執筆を進めていく.
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Causes of Carryover |
生体試料を測定するための試薬は温度管理と保存期間に厳密な条件が規定されていることから,測定検体の数が揃った時点で購入を進めることが適当と判断したため,次年度使用額が生じている.今後,実験を進める中で一定数の唾液検体が採取されるため,順次必要な試薬と消耗品の発注を進めていく.また,試薬を用いた検査を進めるに当たり,長時間にわたり常温環境下に生体試料とその薬剤を曝すことは検査結果に影響を及ぼすことになる.そのため,時間に伴う計測値の影響を最小限にするために,マルチチャネルピペットと遠心分離機を購入する.
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Research Products
(3 results)