2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K16585
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
佐々木 章宏 国立研究開発法人理化学研究所, ライフサイエンス技術基盤研究センター, 研究員 (10711781)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 精神的疲労 / 自律神経 / 機能的MRI / ストレス |
Outline of Annual Research Achievements |
疲労は自発的な活動の開始、維持が困難な状態と定義され、その状態においては認知機能の低下や交感神経活動の亢進が認められる。本研究では他者から視線を受けたり、他者と一緒に過ごしたりすることが疲労や疲労感に及ぼす影響を明らかにすることを目標としている。 (1)他者の視線が疲労感に及ぼす影響についてデータの追加解析を行い、他者の視線を受けながら疲労誘発課題を行った前後の疲労評価課題では課題を繰り返すまでの潜時が短くなることが明らかとなり、他者の視線を受けることで覚醒度が高まることを見出した。また主観評価の結果と合わせ、他者の視線による社会的ストレスは覚醒度を高める反面、疲労度を惹起することが見出された。 (2)親密な他者と過ごすこと疲労感の関連について、新たな実験を行った。交際中の男女20組を対象に疲労負荷課題の後にリカバリー課題をパートナーと共同または単独で行った。その結果、疲労負荷後に有意に増大した主観的疲労感などはリカバリー課題後に有意に低下した。さらにパートナーと共同でリカバリー課題を行った後では単独で同じ課題を行うよりも疲労感の程度が低くなり、パートナーとの共同作業が主観的疲労感を低下させることを見出した。また疲労評価課題として行ったadvanced trail making testの成績は疲労負荷課題前後とリカバリー課題後の実施で正答数が単調増加した。疲労負荷後とリカバリー課題後の正答数の増加の程度とパートナーに対する熱愛度(日本語版熱愛尺度を用いた)との相関解析から熱愛度の高い被験者ほど正答数の増加の程度が大きいことが示され、熱愛度が高いほど疲労度の低減効果が大きくなることが示唆された。 (3)他者の存在に影響を受けやすさに関する個人差について,脳解剖画像と安静時脳機能画像データと社会性、コミュニケーション、性格気質に関する質問票データの解析を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は新たに親密な他者と過ごすことの抗疲労効果をテーマとした実験を立ち上げ、親密な他者と過ごすことが抗疲労に資することを明らかにした。また脳解剖画像と安静時脳機能画像および社会性、コミュニケーション、性格気質に関する質問票データを用いて,他者の存在による影響の受けやすさに関する個人差について解析を進めた。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに行ってきた行動試験から、他者の存在はその他者との関係性に違いが疲労感の増大、抑制と異なる方向に作用することが明らかとなった。今後はこれに関連する神経基盤を明らかにするためのMRI研究を進めるとともに、他者の存在が疲労感の増大または抑制する効果が強くなる状況についても検討を進める。
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Causes of Carryover |
当初MRI計測の被験者謝金として予定していたが、研究に用いるMRIデータとして利活用を可能としたデータを活用したため。次年度使用額については成果発表旅費、英文校閲費用などに使用する。
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