2017 Fiscal Year Research-status Report
新しい慢性疲労モデルの確立と食欲ホルモンの慢性疲労診断マーカーになる可能性の評価
Project/Area Number |
16K16586
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
Hu Di 国立研究開発法人理化学研究所, ライフサイエンス技術基盤研究センター, 特別研究員 (60758580)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 慢性疲労 / ストレス / 疲労モデル / 内分泌異常 / ACTH / コルチコステロン / グレリン / レプチン |
Outline of Annual Research Achievements |
慢性疲労症候群(CFS)は、原因不明の疲労・倦怠感が6カ月以上続く病気である。慢性疲労は人々の日常的社会活動に支障をきたすだけではなく、過労死やうつ病、自殺など深刻な社会問題も引き起こしている。しかし、慢性疲労症候群の詳細な発症メカニズムは未だに分かっておらず、根本的な治療方法は確立されていない。 本研究では慢性疲労モデルを確立し、疲労の慢性化プロセスおよび詳細な分子・神経メカニズムの解明を目指している。 前年度まで14日間のIntermittent Water Immersion疲労負荷より慢性疲労モデルの作製に成功した。このモデルの自発行動量の回復が既報5日間IWIモデル、CWIモデルより顕著に遅延し、さらにこの自発行動量の回復遅延は身体性疲労より精神性疲労の寄与が大きいことを示唆された。 本年度は血中ホルモンの疲労負荷に伴う経時変化を中心に検討を行った。疲労負荷初期にACTHとコルチコステロンの血中濃度は上昇したが、その後ACTHは一過性に低下し、疲労負荷後期において再上昇するのに対して、コルチコステロンは持続的に上昇することを明らかにした。これらの結果は、疲労負荷の後期におけるコルチコステロンよるネガティブフィードバック調節の機能異常を示唆している。また摂食調整に関わるレプチン/グレリンの血中濃度に関しては、食欲ホルモンであるグレリンは負荷初期から徐々に上昇し、レプチンは負荷初期には上昇する傾向を示し、負荷中期から著しく減少すること、さらに、摂食抑制効果を持つaMSHが負荷中期から上昇することを見出した。疲労負荷中期から酸化ストレスマーカーdROMが上昇したが、抗酸化力マーカーBAPが変化しなかった。これらの結果は、疲労の蓄積に伴い睡眠調節機構の異常に加え、上昇する酸化ストレスやホルモンの制御機能異常が引き起こされ、疲労の慢性化を来す可能性を示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、計画通りに2年目に慢性疲労モデルの疲労負荷前後の血中ホルモン(レプチン、グレリン、ACTH、コルチコステロン、aMSH)の測定を行った。特に摂食制御に関わる食欲ホルモンレプチン・グレリンの疲労負荷経時変化を検討した。 グレリンは疲労負荷初期から徐々に上昇し、レプチンは疲労負荷初期には上昇する傾向を示し、疲労負荷中期から著しく減少すること、さらに、摂食抑制効果を持つaMSHが疲労負荷中期から上昇することを見出した。これらの結果は、疲労負荷中期から上昇する酸化ストレスマーカーdROMと合わせると、疲労の蓄積に伴う酸化ストレスの上昇が脳内・末梢のレプチン・グレリンのバランス制御異常が引き起こされ、疲労の慢性化を助長する可能性を示唆された。このため、レプチンとグレリンの是正により慢性疲労の改善を期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
慢性疲労モデルにおいて、食欲制御に関与するホルモンレプチン・グレリンのバランス制御異常が引き起こされたため、レプチンとグレリンの阻害剤実験やgain/loss of function実験を行うことで、両因子が疲労の慢性化形成にどのような関与するのかを検討する。今年度末を目途にデータをまとめて投稿する。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由:計画通りに本年度に慢性疲労モデルの疲労負荷前後の血中ホルモン(レプチン、グレリン、ACTH、コルチコステロン、aMSH)の測定を行った。その目的に沿って実験動物の購入や行動学評価用機材、生化学評価用試薬等に支出を行った。レプチン、グレリン、ACTH、コルチコステロンとaMSHを測定するELISAキットの値段が当初計画より安く仕入れできたので、減少分の未支出が次年度使用額の生じた原因である。 使用計画:血中ホルモン(レプチン、グレリン、ACTH、コルチコステロン、aMSH)測定用ELISAキットをはじめ、レプチンとグレリンのアゴニスト・アンタゴニスト(4種類、全身投与または脳内投与)や遺伝子解析用試薬(RNA抽出キット、プライマー、realtime-PCRキット等)、実験動物の購入等に支出する。また国内・国際学会等の参加時出張費用ならびに投稿論文の英語校正料・投稿費を計上する予定である。
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