2017 Fiscal Year Research-status Report
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16K16598
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Research Institution | Tokyo University of Marine Science and Technology |
Principal Investigator |
石川 雄樹 東京海洋大学, 学術研究院, 博士研究員 (50638004)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ヘキサナール / B16細胞 / ガン / 脂質酸化 |
Outline of Annual Research Achievements |
ある種のガンを罹患した患者の体内では悪臭成分のヘキサナールが多く生成することが知られている.研究代表者はこれまでに,ガン由来のB16細胞がヘキサナールを感知し細胞内Ca2+濃度上昇などの情報伝達を起こす受容担体を有しており,ガンの進行に関わる遺伝子発現の変動させることを明らかにしている. 今年度は培養細胞系を中心に,受容担体の特定とガン関連遺伝子発現変動に着目して検討を行った.近年,TRPチャネルファミリーに属するTRPA1チャネルがヘキサナールに対し感受性を示し細胞内Ca2+流入を起こすことが報告された.そのためB16細胞で生じるヘキサナール感受性カルシウムイオン濃度上昇へのTRPA1の関与可能性について検討した. TRPA1発現の有無については,発現既知のマウス組織及び発現陽性細胞株をポジティブコントロールとしRT-PCRにより確認を行うとともに,TRPA1アゴニスト投与の応答をCa2+イメージング法により測定し,薬理学的に評価を行った.その結果,B16細胞ではTRPA1の発現がRT-PCRでは確認されず,陽性細胞株で確認されるようなアゴニスト誘導性Ca2+応答は確認されなかったことから,B16細胞で発現しているヘキサナール感受性チャネルはTRPA1を介したものではなく,これまでに報告されているものとは異なるものであることが一層明確となった. またB16細胞に対しヘキサナール投与を行うことで生じるガン関連遺伝子の発現変動について,Ca2+イオノフォアであるionomycin投与と比較し検討を行ったところ,両者においてガン促進に関与する遺伝子の発現亢進する類似傾向が確認されたものの,一部遺伝子ではその発現挙動が異なった.以上よりヘキサナールはB16細胞において細胞内カルシウムイオン濃度上昇を引き起こす以外に異なる情報伝達系にも作用している可能性が示唆された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ガン細胞のヘキサナール投与による情報伝達機構についてこれまでにない知見が得られたこと,並びにB16細胞に発現するヘキサナール感受性チャネルについて候補の絞り込みを行うことが出来たことから,ある程度研究の進展が見られたものの,受容担体の特定には至らなかったため.
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの検討では,B16細胞のヘキサナール感受性イオンチャネル候補について薬理学的な特徴からターゲット候補を選定し,RNAi法によるノックダウン系から検討したがその特定には至らなかった.そのため今後はより広い側面からターゲットを絞る実験系として,B16細胞で特徴的に発現する転写因子のノックアウトを行い,応答の消失が生じるかについて検討を行う予定である.既にノックアウトに必要なゲノム編集用gRNAの設計を行い,設計した配列がターゲットに対し切断活性を有していることを確認している.今後はノックアウト株のクローニングを行い,Ca2+イメージング法等を指標として検討を行う予定である. 今年度はヘキサナール受容機構に関する検討を中心として行ってきたが,今後は生体内からのヘキサナール発生と制御について実験動物を用いた系においても検討する予定である.
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Causes of Carryover |
保存していたクローニング細胞株がトラブルにより損失してしまったため研究計画に遅れが生じてしまった.そのため補助事業期間延長を申請し研究計画に必要な次年度使用額が生じた. 今後はすでに確立しつつあるゲノム編集による遺伝子ノックアウトを用いた実験系での受容担体の探索により効率的な特定を行う.また生体内からのヘキサナール発生と制御について実験動物を用いた系においても検討する予定である.
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