2018 Fiscal Year Research-status Report
白内障の病態形成に関わるアスパラギン酸異性化メカニズムの解明
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16K16605
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Research Institution | Tokyo University of Pharmacy and Life Science |
Principal Investigator |
坂上 弘明 東京薬科大学, 薬学部, 助教 (80734855)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 異性化 / アスパラギン酸 / 紫外線 |
Outline of Annual Research Achievements |
タンパク質を構成するアミノ酸は通常、全てL型であるが、加齢に伴ってアスパラギン酸(Asp)残基がL型からD型へ異性化することが明らかとなっている。特に水晶体の主要構成タンパク質であるクリスタリンでは、特定のAsp残基が著しく異性化する事が知られており、Asp残基の異性化と白内障発症との間に因果関係が示唆されている。Aspの異性化反応は加齢に伴って徐々に進行するほか、紫外線照射によって促進される事が先行の統計調査によって明らかとなっている。しかしながら、Asp残基は紫外線を吸収しないため、紫外線によるAspの異性化促進反応にはトリプトファン(Trp)やチロシン(Tyr)によって吸収されたエネルギーがAspへ転移することが考えられた。しかしながら、本年度の検討では、ペプチド溶液へTrpやTyrを添加することにより、逆に紫外線によるAsp異性化反応を抑制する結果が得られた。すなわち、TrpやTyrが紫外線を吸収し、Aspに異性化エネルギーを与えるのではなく、ペプチドへの紫外線ダメージを抑制したものと示唆される。以上のことから、水晶体中にAsp異性化を促進させる他の因子が存在するものと考えられる。 また、本年度はpHを変化させてAsp異性化進行度の違いを検討した。Asp残基には4つの異性体が存在するが、時間に伴ってペプチド中に存在するAsp異性体の種類はダイナミックに変化することが明らかとなった。さらに、グルコースの添加はAspの異性化を促進させ、スクロースでは生じないことから、糖の還元性がAsp異性化に関与していることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究組織の移動により生じた進捗の遅れを取り戻せない状況が依然として続いているが、昨年度構築したAspおよびGluの異性化解析法により、異性化促進因子や抑制因子の解析が可能となった。本年度はこの手法を用いてAspおよびGluの異性化進行に対する紫外線、pH、糖の関与について検討を行うことができたため、研究を進捗させることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の検討により、4種類のAsp異性体は時間とともにそれぞれ一定速度で変換されるのではなく、異性体の種類を変化させながら、最終的な異性体存在比へと到達することが示唆された。今後は、Asp異性体がどのように変換されていくのかを細かく検討していく。また、予想に反してTrpやTyrは紫外線に対するAsp異性化の抑制因子として働くことが示唆された。これは、紫外線誘発生の白内障治療に有用である可能性が考えられる。さらに、糖によるAsp異性化促進反応にはカルボニル炭素が関与することが示唆されたため、来年度は糖によるAsp異性化反応について検討を進める。
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Causes of Carryover |
研究の進捗が遅れているため、次年度使用額が生じた。 本年度、遅れている研究を進めるための物品費として使用する。
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Research Products
(1 results)