2016 Fiscal Year Research-status Report
乳児の言語発達とストレス耐性の関係を探る縦断的研究
Project/Area Number |
16K16629
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
山根 直人 国立研究開発法人理化学研究所, 脳科学総合研究センター, 専門職研究員 (60550192)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 発達 / 子育て / 言語発達 / ストレス耐性 / 乳児 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒトの言語獲得において、乳児期の母語音声に対する聴覚学習はその基盤をなしている。この乳児期の音声情報処理の発達変化には、順序や時期に一定の共通性があることが明らかになっている。しかし同時に、大きな個人差が含まれていることもまた認められている。では、この乳児期の聴覚情報処理の個人差はどこから生まれてきているのであろうか?本研究では言語発達の初期段階に既に見られる音韻弁別能力の個人差を生む要因が、聴覚情報処理以外にも存在しているのではないかと仮定し、そのメカニズムの解明を試みる。そのため、乳児期の母語の音韻体系に対する弁別能力(以下、音韻弁別能力)が、ストレス耐性や実験場面そのものに対する乳児の反応、気質などに関連していると仮説を立て、1)8ヵ月児における日本語長短母音の弁別実験、2)10ヵ月児における母子分離場面におけるストレス耐性実験、3)質問紙による気質調査を縦断的に実施することを目的としている。 本年度は主にデータ取得に重きを置き研究を進めてきた。その結果、実験1)で140名の8ヶ月児、さらにその2か月後に実験1)に参加した10ヶ月児127名のデータを取得することができた。さらに実験2)より、10ヶ月児の母子分離場面におけるストレス耐性に関与するバイオマーカーとして唾液中コルチゾール及びアミラーゼの関与、心拍反応と心拍変動のストレス反応との関連について明らかにすることができた。研究業績としてこれらの結果をパイロット実験の結果と合わせ、5月に行われた国際学会、ICISで2本発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の予定では、1年間でのべ100人ずつデータを取得予定であったが、予定を大幅に上回り本年度中で必要なデータ(のべ247人分)を取り終えることができた。そのため、本研究の言語発達的な知見をより発展的にする目的のもと、参加してくださった乳児を対象とし20ヶ月時点で単語認識に関する眼球運動測定実験とこの時期における語彙発達質問紙調査を新たに追加することにした。この知見を新たに加えることで音韻弁別能力のみであった言語発達指標に、その後の単語認識力ならびに、語彙発達を加え、本研究の目的である言語発達の個人差に与える乳児期の音韻弁別とストレス耐性の関与を多面的に考察することが可能になると考える。また、今後の解析結果で実験1)と2)との間に関連が見られなかった際にも、その後の言語発達との相関がみられる可能性も考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は本年度に行った実験1)及び実験2)の各々の解析と関連について分析・検討を行う。それと並行して、昨年度中に実験1)、2)の双方に参加してくれた127名についてさらに20ヶ月時点での語彙発達検査と単語認識に関する眼球運動測定実験を行い、随時分析を行う。実験1)、2)の結果については、7月に行われる国際学会IASCL2017と10月に行われるBUCLDで発表予定であり、各々得られたフィードバックから、さらなる検討と論文執筆を進める。
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Causes of Carryover |
当初の予定よりデータ取得率がよかったため、消耗品にかかる費用が予定より少なかったために次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
追加で実施する20ヶ月児を対象とした実験の消耗品(質問紙及びテープ代など)として使用する。
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