2016 Fiscal Year Research-status Report
子ども期の逆境体験の長期的健康影響に関する日英比較
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16K16633
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Research Institution | National Center for Child Health and Development |
Principal Investigator |
雨宮 愛理 国立研究開発法人国立成育医療研究センター, 社会医学研究部, リサーチアソシエイト (70728394)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 幼少期の逆境体験 |
Outline of Annual Research Achievements |
虐待や経済的困難などの子ども時代の逆境体験は、過度の飲酒や薬物依存などの不健康な生活習慣のリスクファクターとなり、心血管疾患や癌の発症に至ることが知られている(Felitti,1998)。日本においては子ども期の逆境体験と成人期の不安障害などの精神疾患との関連性 が発表されたのみで(Fujiwara, 2011)、その他の報告はほとんどみられない。本研究の当該年度では、幼少期の逆境体験と高齢期の手段的日常生活動作能力(IADL, instrumental activities of daily living)の関連について、日本老年学的評価研究(Japan Gerontological Evaluation Study)のデータを用いて解析を行った。JAGES は、要介護認定を受けていない65 歳以上の高齢者を対象とした、20万人規模のパネル調査である。2013年度の調査では、全国30市町村の約19.5万人の高齢者に質問紙を配布し、約13.8万人(回収率70.8%)から回答を得ている。このうちの約2 万人について小児期の逆境体験を質問しており、本研究ではこれを主な説明変数とした。分析の結果、幼少期の逆境体験のある人は、高齢期のIADLが低いことが示唆された。またこの影響は、幼少期や大人期の社会経済的地位、疾患の有無を調整してもみられた。これは幼少期の逆境体験が高齢期の健康にも直接影響することを示唆しており、幼少期の逆境体験の影響を緩和するような介入の重要性を示している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度は、幼少期の逆境体験と高齢期の手段的日常生活動作能力の関連について、日本老年学的評価研究(JAGES)を用いたデータ解析を行い、その結果について国際学会で発表をすることができた。さらに論文執筆も行い、現在英文雑誌に投稿中である。また、幼少期の逆境体験と高齢期の飲酒・喫煙などの生活習慣や、心血管疾患・糖尿病などの疾患との関連についての分析も行い、次年度の課題である国際比較研究の準備も進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題は、幼少期の逆境体験と高齢期の健康について、国際比較研究を行うことを方策としている。当初、日本のデータとイギリスのEnglish Longitudinal Study of Aging(ELSA)との比較を予定していたが、ELSAの調査対象人数が少ないことから、フィンランドのFinnish Public Sector Study(FPSS)との比較を検討している。2016年2月にはFPSS担当者とフィンランドで会議を開催し、研究方針について合意を得た。2017年6月にも再度フィンランドで会議を開催する予定である。このとき、日本のデータ分析結果とFPSSのデータ分析結果について比較する。その後論文執筆を進めていく予定である。
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Causes of Carryover |
すぐに必要だった書籍を自費で購入したため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は、主に書籍を中心とした物品費、国内・国際学会での業績発表のための旅費、情報収集のための研究会参加費として研究費を使用する予定である。
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