2016 Fiscal Year Research-status Report
細胞間相互作用を可視化する糖修飾蛍光プローブのin silico探索と合成
Project/Area Number |
16K16640
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
金森 功吏 東京工業大学, 生命理工学院, 助教 (90633446)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 蛍光プローブ / レクチン / 糖 / in silico / 細胞間相互作用 / 有機合成 / ドッキングシミュレーション |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、細胞表面に存在するセレクチンとそのリガンドである糖鎖を介した細胞間相互作用の可視化を目指し、セレクチンに結合して蛍光応答性を示す糖修飾蛍光プローブの設計と合成を行うものである。 平成28年度において、まず糖鎖との共結晶構造が解かれているセレクチンを標的とし、糖認識ドメインに対してドッキングシミュレーションを行い、糖と色素複合体の構造探索を行った。さらに、糖-色素複合体とセレクチンの結合親和性を高めるリガンドを探索するため、設計した糖-色素複合体をセレクチンに配置し、この構造に対して、トリペプチド約6万化合物と化合物ライブラリーを用いてin silicoスクリーニングを行った。その結果、糖-色素複合体のセレクチンに対する結合親和性向上が期待される候補化合物と予測結合サイトを見出すことができた。 また、糖-色素複合体の基本骨格の合成ルートを検討し、異なる蛍光色の色素合成にも適用可能な合成法を確立できた。これらの成果を、日本化学会 第97春季年会 (2017 於 慶応義塾大学日吉キャンパス)のポスター発表にて報告した。 今後は、in silicoスクリーニングの結果に基づいて設計した化合物の合成と、それらを細胞や標的セレクチンに添加した際の蛍光測定を進めていく予定である。必要に応じて、細胞を用いた蛍光測定で良好な蛍光応答を示した化合物をリードとし、再びin silicoスクリーニングを行い、構造最適化を進める予定である。最終的には、これらの糖修飾蛍光プローブを添加した細胞に異種細胞を加え、その蛍光応答によって糖鎖とセレクチンを介した細胞間相互作用の直接検出を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度において、糖修飾蛍光プローブの基本骨格の合成法の開発を行い、さらに当初予定していたin silicoによるFragment Based Dockingを、トリペプチド(約6万化合物)およびZINC化合物ライブラリー(約2万化合物)を用いて行い、標的セレクチンへの結合が期待される候補分子の探索を行った。その結果、有望な候補分子を見出すと共に、セレクチンに対して糖認識部位の他にリガンドが結合すると期待される結合サイトを見出した。今後は、これらの知見に基づき糖修飾蛍光プローブの設計と合成、ならびに細胞を用いた評価を進めて行く予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度に確立した合成法を用い、ドッキングシミュレーションを元に設計した蛍光プローブ群の合成を行う。合成した蛍光プローブをセレクチンを発現している培養細胞または、セレクチン溶液に対して添加し、蛍光強度変化の評価を行う。良好な蛍光応答を示した分子をリード化合物とし、必要に応じてさらに誘導体を設計しドッキングシミュレーションによる評価を行い構造最適化を進める。つづいて設計した化合物を合成し、先述の細胞や標的セレクチン溶液を用いた評価を進めていく予定である。
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Causes of Carryover |
平成28年度では、東工大スーパーコンピュータ(TSUBAME)を用いたin silcoスクリーニングを進めたことと、当初の計画よりも合成ルートの開拓が効率よく進み有機合成にかかる経費が予想よりも低くなったため、当該の繰越が発生した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度は、設計した化合物の有機合成と、必要に応じてin siilcoスクリーニングを進める。さらに、細胞を用いた蛍光評価も進めるため、生化学実験に関する経費としても活用する予定である。
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