2016 Fiscal Year Research-status Report
低分子化合物によるヒト成体肝細胞からの肝前駆細胞の作製
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16K16643
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Research Institution | National Cancer Center Japan |
Principal Investigator |
勝田 毅 国立研究開発法人国立がん研究センター, 研究所, 研究員 (40732326)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ヒト肝細胞 / リプログラミング / CLiP / 高置換 / 肝前駆細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度である平成28年度は,ヒト成熟肝細胞からのCLiP誘導の可能性について検討した.げっ歯類でのリプログラミング因子を少し改変することで,乳幼児のヒト肝細胞をリプログラミングできることを明らかにした(詳細に関しては特許申請中のため記述を控える).誘導されたヒトCLiPはEPCAM, CD24, CD133, CD49f, CD44といった,一連の肝前駆細胞マーカータンパクを発現し,少なくとも10回以上継代培養可能であった.また,オンコスタチンMの刺激を与えることで,肝細胞の機能に関わる遺伝子の発現を誘導することも可能であった.重要なことに,この細胞を免疫不全肝障害モデルマウスであるcDNA-uPA/SCIDマウスに移植すると,血中ヒトアルブミン濃度は最大15 mg/ml以上に達し,置換率は90%以上に達した.過去の培養細胞の移植では,血中ヒトアルブミン濃度は最大でも1 mg/ml以下,置換率は30%以下であったことからも,本研究の成果が極めて重要であることがわかる.以上の通り,初年度において既に,本研究計画のStep 1, Step 2, Step 3の重要項目を概ね完遂できたと言える.2年目はStep 2の課題の一部である胆管分化の可能性を探るとともに,長期培養後のヒトCLiPの移植によっても高置換の肝再生が可能となるかどうかに重点をおいて研究を進める.さらに,代謝活性に焦点を当てて,移植後のヒト細胞が機能的な肝細胞になっているかどうかについても検討していく.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の予定では,初年度はStep 1の遂行,すなわち低分子化合物ライブラリーを用いた,ヒト肝細胞リプログラミング因子の探索が主目的であった.これに基づき,本研究ではまずTOCRIS社から提供されている,幹細胞培養に役立つ80種類の化合物を収録したライブラリーであるStem Cell Tool Boxを用い,成人肝細胞が増殖能を獲得するかどうかについてスクリーニングを行った.しかし,残念ながら成人肝細胞では増殖能の獲得には至らなかった.一方,当研究室の経験および文献上効果がありそうと思われる化合物についてピックアップし,小規模なスクリーニングを実施した.この際,成人肝細胞に加え乳幼児肝細胞も並行して解析を行ったところ,ある化合物の組み合わせにおいて,乳幼児肝細胞であれば明らかな増殖能の獲得が達成でき,さらにこの増殖細胞は複数回にわたって継代培養が可能であった(特許申請中のため詳細については記述を控える).成人肝細胞についてもある程度の増殖は確認できたが,増殖能には限りがあり,継代培養は現在のところ困難である.将来的には成人肝細胞のリプログラミングにも挑みたいと考えているが,当面は現時点で有望な結果が得られている乳幼児肝細胞に焦点を当てて進める.乳幼児細胞であっても,HLA型が適合すれば他家移植も可能であることから,細胞ソースの規模を拡大することで,移植可能な培養肝細胞バンクを樹立することも可能であると考えている.なお,乳幼児由来のヒトCLiPについては既に,生体外での肝分化能および,慢性肝炎モデルマウスの肝臓の高置換能を既に確認済みである.
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Strategy for Future Research Activity |
今後の課題は(1)ヒトCLiPの胆管分化能の評価,(2)ヒトCLiPの染色体・ゲノム安定性の評価,(3)長期継代後のヒトCLiPが障害肝臓の再生に寄与しうるかどうかの評価,(4)成人肝細胞からのヒトCLiP誘導の可能性の検討,の4つが主たるものとなる.具体的な研究方針は以下のとおりである. (1)ラット・マウスでの実験と同様の条件で,ヒトCLiPからの胆管分化誘導を試みる. (2)複数回継代を重ねた細胞を用い(継代数1, 5, 10が目安),カリオタイピングおよび,発がん関連の遺伝子についてのサンガーシークエンスを行って評価する. (3)継代数1, 5, 10の細胞を肝障害免疫不全マウスに移植することで,どの程度継代数を重ねた細胞でも再生能が維持されているかを検討する. (4)リプログラミング刺激を与えた際に,乳幼児肝細胞と成人肝細胞とで発現変動する遺伝子プロファイルおよび,パスウェイ群を探索する.これにより,成人肝細胞のリプログラミングの誘導に必要な刺激をある程度予測できるようになると考えている.
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Research Products
(5 results)