2017 Fiscal Year Research-status Report
高速カルシウム計測による視交叉上核神経回路の機能的構造解析
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16K16645
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
織田 善晃 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(歯学系), 助教 (20735542)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 概日リズム / 蛍光イメージング / カルシウム |
Outline of Annual Research Achievements |
哺乳類の概日時計中枢である脳視床下部視交叉上核の神経細胞は、細胞内カルシウムイオン(Ca)濃度が約24時間周期で変動すること(概日Caリズム)が知られている。一方、一般的に神経細胞では細胞内のCaがミリ秒~秒単位の一過性変動を示すことが知られている。このことから、概日Caリズムが一過性Ca変動の頻度や振幅の概日変動によって生じる可能性がある。そこで本研究では、視交叉上核神経細胞において概日Caリズムと一過性Ca変動の関係性を検討するために、培養視交叉上核スライスを用いて両者を同時に計測した。その結果、ほとんどの細胞は一過性Ca変動を示さず、蛍光輝度変化の基線が概日Caリズムと同位相で変化することが観察された。 本研究により、視交叉上核神経細胞の概日Caリズムは一過性Ca変動の頻度や振幅が変動することによるものではなく、主に静止状態での細胞内Ca濃度の変動により生じるものであることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
培養視交叉上核スライスの神経細胞特異的に遺伝子コード型の蛍光カルシウムプローブを発現させ、従来研究同様の長期タイムラプス計測に加えて短露光時間・短サンプリング間隔・20秒間の高速Caイメージングを毎時行い、72時間以上にわたって同一スライスから一細胞解像度で概日Caリズムと一過性Ca変動を計測した。当初、視交叉上核神経細胞の一過性Ca変動は概日Caリズムと同様の周期で頻度・振幅が変化すると想定していた。しかし高速イメージングの画像を解析した結果、観察した神経細胞のうち一過性Ca変動を示す細胞は全体の1 %未満であることがわかった。さらに高速イメージング画像(30ミリ秒露光)と長期タイムラプス画像(1秒露光)の輝度変化を比較したところどちらも同一位相の概日リズムを示し、概日Caリズムは計測に用いる露光時間に依存しないことが示された。また20秒間の高速イメージング画像中、蛍光輝度の基線が概日リズムと同位相で変動することも観察された。以上のことから、視交叉上核神経細胞の概日Caリズムは主に細胞内Caの静止濃度が変動することにより生じるものであることが明らかになった。 一方、視交叉上核の腹外側部に位置するVIP神経細胞特異的にカルシウムプローブを発現させ、長期タイムラプスシステムよりも高空間分解能のシステムを用い、一時点(概日Caリズムのピーク及び底時点)で高速イメージングを行った。その結果、直径が1 - 2 ミクロンの突起構造において頻繁に一過性Ca変動を示すことが分かった。ただし現時点で突起構造が神経細胞のどの構造にあたるかは解明できていない。 当初の想定とは異なる結果が観察されたが、概日Caリズムと一過性Ca変動の関係性を示すことができ、おおむね順調な結果であると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
長期タイムラプスシステムを用いた短露光時間のイメージングについて、高速イメージングにおけるシステムの揺らぎ成分を検討する必要がある。そこで視交叉上核神経細胞特異的にGFPを発現させ高速イメージングを行う。これにより得られたシステムの特性を高速Caイメージング画像から除去することで、より厳密に一過性Ca変動を抽出する。 また高空間分解能の高速イメージングにおいて一過性Ca変動が頻繁に観察された突起構造が細胞のどの構造にあたるのか、特にシナプス前末端と後末端のどちらであるかを解明するために、免疫染色を行う。さらに神経細胞のどのような活動によるものかを調べるため、高速イメージングと同時にホールセルパッチクランプ法を用いて神経細胞の電気活動を同時に計測する。
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Causes of Carryover |
高空間分解能の高速イメージングは1回の実験で1脳スライスのみの観察に限られていたため、使用する動物および消耗品による出費が抑えられた。また大量の画像解析に時間を使ったため論文投稿を次年度に先送りし、本年度予算に余剰が出た。 研究拠点を移動したため、次年度に予定している蛍光と電気生理の同時計測を行うための設備を新たに構築する。このために必要な物品(灌流ヒーター、除振用設備)の購入に使用する予定である。
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Research Products
(2 results)