2016 Fiscal Year Research-status Report
複数のエピジェネティクス解析を用いたコカイン感受性亢進責任遺伝子の同定
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16K16648
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Research Institution | Kurume University |
Principal Investigator |
大西 陽子 久留米大学, 医学部, 助教 (70727586)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 薬物依存症 / 転写因子 / エピジェネティクス / コカイン |
Outline of Annual Research Achievements |
薬物としてコカインを使用しているが、一般的に麻薬などの薬物感受性とは、同量の薬物を投与したときの反応性の違いのことを意味します。たとえば、コカインなどの依存性薬物を連日投与した場合、その反応性は徐々に上がっていきます。毎日、マウスに同じ量を投与し続ければ、投与後の運動量は徐々に上昇していき、連日投与した後、1週間あけて少量投与しても、それまでの量と同じくらいの反応性を示したりします。この現象は、何らかの記憶物質が脳の神経ネットワークにたまっていると考えると理解しやすいです。その記憶物質が、ネットワークそのものなのか、何らかの物質なのか、また、その物質は同じ細胞に存在し続けるのかといったことが疑問として出てきます。 とはいえ、毎回投与されるたびに少しずつ増えていく物質だったり、神経細胞同士のつながりだったりするとわかりやすいわけです。 我々のグループは、deltaFosBという転写因子がコカインが作用する側坐核という部位で連投に合わせて徐々に増えることを見出し、deltaFosBの過剰発現でコカインの感受性が上がることを見出しました。 しかし、deltaFosBがどう働いているかは分かっていませんでした。そこで、deltaFosBに結合する蛋白質をyeast two hybrid法を用いて調べました。 その結果、複数の結合蛋白質候補を見出し、その中で一番確度の高かったSug1という蛋白質との関係性を詳細に調べ、deltaFosBが転写を促進するときの複合体の一端を明らかにし、論文として発表しました。 Sug1はプロテアソーム複合体の一部であるため、核内プロテアソームとの関係、どのタイプの細胞でどのように働いているか、標的遺伝子は何か、依存症にも関係しているのかといった疑問が湧くわけですが、現在、標的遺伝子を明らかにするため、免役沈降実験の精度を上げるための条件探しをしている段階です。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
依存症において側坐核で働いている細胞のタイプとしてはD1ドーパミン細胞であることがいくつかの角度から既に報告されているため、そこには力を入れず、その他の部分に注力する方向に変更している。 核内プロテアソームとの関係では、プロテアソーム阻害剤の注入下での実験を行った。また、コカイン依存症への影響も検討している。 免役沈降実験とその後のChIP seqには一度の実験にかかる金額がかなり大きいため、確実性を上げるために予備実験を繰り返している段階である。
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Strategy for Future Research Activity |
コカイン感受性やコカイン依存症を調節するメカニズムについて元来言われていた神経回路やその働きとは違う回路が中心的に働いている可能性を見出しているため、調べる部位を変更する可能性を検討している。また、核内プロテアソーム複合体の役割はほとんど細胞レベルの実験で個体での役割解明はまだ未検討の部分が多いので、それについても挑戦する予定である。
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Causes of Carryover |
子供の病気、および保育園に空きがない状態で十分に研究に時間を割くことが出来なかったため1年間研究期間を延長して研究が十分出来る状態になってから取り組むため。現在、子供の病状も安定し、引っ越ししたため保育園も見つかっている。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
依存症に関わる転写調節機構という部分は変わらないが、最近、私たちのグループで今まで常識と考えられてきたことと違う現象を捉えており、プロテアソーム複合体の関わりも含めてよりカッティングエッジな取り組みに絞ることを検討している。
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