2017 Fiscal Year Research-status Report
乳幼児を対象とした頭部構造画像不要の脳機能計測法:確率的拡散光トモグラフィの開発
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16K16651
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
續木 大介 首都大学東京, 人文科学研究科, 特任准教授 (50646346)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 乳幼児 / 拡散光イメージング / 参照脳 / DOT |
Outline of Annual Research Achievements |
平成 29 年度は、従来の ADOT (Atlas-based Diffuse Optical Tomography) と確率的 DOT (Diffuse Optical Tomography) とのデータ整合性の確認を目的としたシミュレーションを行った。また、乳幼児を対象とした確率的 DOT の実施に向け、確率的 DOT における空間レジストレーションの技術的基盤である頭表ランドマーク参照型アフィン変換を用いて、IPS (Interpersonal Synchrony) 研究での fNIRS 計測箇所のレジストレーションおよび空間解析を行った (Bhat et al., 2017)。 従来の ADOT においては、被験者自身の脳構造画像の代わりに、テンプレートとして個人脳 Colin27 (標準脳)を参照している。本研究では、当初、Colin27 を含まない新たな脳構造データセットを用いて確率的 DOT のシミュレーションを行っていたが、研究遂行の過程において ADOT との画像再構成結果の比較が必要となったため、Colin27 を含めた参照脳データセットの作成とバリデーションを実施した。その結果、単一参照脳を用いる ADOT によって再構成された画像の空間誤差の平均値に対し、複数参照脳を用いる確率的 DOT によって再構成された画像の空間誤差の平均値が有意に小さくなり、確率的 DOT の有効性が認められた。 また、乳幼児を対象とした IPS 研究に向けて、確率的 DOT の使用を想定した基礎的検討を行った。より具体的には、確率的 DOT において複数参照脳を変形させるために用いている頭表ランドマーク参照型のアフィン変換を適用し、成人の IPS 研究における fNIRS 計測箇所の空間的・解剖学的推定を行い、その有効性について検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成 29 年度の研究実施計画として予定していた、MNI 標準座標系に準拠した解剖情報ラベル AAL (Tzourio-Mazoyer et al., 2002), AAL2 (Rolls et al., 2015), LPBA40 (Shattuck et al., 2008) の DOT への適用が滞っている。その理由として、研究協力者の所属が MGH (Massachusetts General Hospital) から B.U. (Boston University) へと変更になり、MGH が所有している DOT 関連のデータセットへのアクセスが困難になったことが挙げられる。現時点で、確率的 DOT によって再構成される画像のバリデーション自体はほぼ完了しており、確率的 DOT の有効性を示すことができているものの、解剖ラベルに含まれるマクロアナトミーの情報を参照する形で確率的 DOT を拡張するために、新たなデータセットの確保までを視野に含めて、研究を進める必要があると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
複数の参照脳を用いて、光伝播のシミュレーションと計測箇所の画像再構成を行う確率的 DOT は、被験者の頭部構造画像が不要な脳機能計測法である。本研究の最終的な目的は、乳幼児を対象とした確率的 DOT の手続きの確立であるが、その実現のために今後必要とされるのは、1. 乳幼児の頭部構造を反映した参照脳データセットの確保あるいは作成、および、2. 乳幼児と成人の脳の構造ならびに解剖学的差異の検討、の 2 点である。1. に関しては、Brigadoi et al. (2014) によって公開されている 4D neonatal head model を参照した上で、成人参照脳データセットよりも適したテンプレートを用いるように確率的 DOT を拡張し、対応する。2. に関しては、頭表ランドマークに基づいた同一のプローブ設定によって確率的 DOT を、成人参照脳と乳幼児参照脳とで実施し、それぞれにおいて再構成された画像の差異を、定量的に分析することで対応する。
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Causes of Carryover |
予算に計上していた MRI データ処理システムの価格が、実際に見積もりを行ったところ、予定よりも低くなり、差額が生じたため。また、当初、平成 29 年度は研究発表のための複数の海外渡航を予定していたが、研究代表者の所属変更とともにスケジュールも変更せざるを得なくなり、結果として海外渡航の回数が減り、旅費に差額が生じたため。
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Research Products
(3 results)